プラハ国立歌劇場の来日公演・プッチーニ「トスカ」(10/16 東京文化会館)の感想


プラハ国立歌劇場の来日公演・プッチーニ「トスカ」(10/16 東京文化会館)の感想です。

2011-10-16c

ノルマ・ファンティーニのトスカは掛け値なしに絶品でした。低音・高音を問わず声が独特の柔らかみを帯びた艶やかで高貴な美しさを帯び、それがプッチーニの音楽の甘美な色調に対し絶妙にフィットしていて、その声自体の持つ得難い魅力だけでも絶大なものがあるのに、加えて非の打ちどころのない歌唱テクニック(ブレスコントロールの巧みなこと!)、ここぞという時の声量の豊かさ(第2幕「歌に生き恋に生き」では歌い終わったあとホール内の拍手喝采がしばらく止まなかった!)、機械的な歌い回しとは無縁な溢れんばかりの感情の発露(第3幕でのカヴァラドッシとの二重奏での「(スカルピアに)刃物を突き刺した」のハイCのくだり!)、これらの要素が混然一体となって醸し出すプリマとしての強烈なオーラ。

ファンティーニがまさに「伝統のベルカント唱法を受け継ぐイタリアを代表する名ソプラノ」であるという事実をつくづく実感させられた舞台でしたし、同時に、一般にはヴェリズモに近いオペラとして位置づけられる「トスカ」が本質的にベルカント(美しい声)のオペラであるという事実もまた、ファンティーニの並はずれた歌唱力によりまざまざと認識させられた舞台でした。素晴らしいトスカでした。

カヴァラドッシを演じたピエロ・ジュリアッチは声量だけならファンティーニをも凌ぐかというくらい声が出ていましたが、第3幕の「星は光りぬ」など聴いていて強弱の動きが計ったように機械的だったりなど、やや声量に頼り過ぎて細かいニュアンスが大味に流れていた印象も受けました。スカルピアを演じたミゲランジェロ・カヴァルカンティは細かいニュアンスには富んでいてスカルピアのゾッとするような卑劣な人格が観ていて良く伝わってきましたが、ここぞというところで声量が明らかに不足気味だったのが残念でした。ジョルジョ・クローチ指揮のオケの演奏は全体に可もなく不可もなく、やや非個性的とも思えましたが正攻法にやるべきことをやり尽くした手堅い運用でした。

演出に関しては、舞台装置の視覚的なリアリティと美しさが印象的でした。公演プログラムによると、このプロダクションはチェコの舞台設計家イルジー・スヴォボタの手による1947年の舞台装置に基づく復元演出とのこと。聖アンドレア教会(第1幕)、ファルネーゼ宮殿(第2幕)、聖アンジェロ城(第3幕)、それぞれの舞台となる建造物の重厚な色調や質感が素晴らしく、その実在感が劇に独特のリアリズムを付与していました。リアリズムといえば、終幕の際のトスカの投身自殺のシーンでファンティーニは本当に身投げをするように両脚を揃えて頭から舞台裏に飛び降りていくように見えました。おそらく後ろにネットか何かが張ってあるのでしょうけど、演技としては迫真でしたがひとつ間違えば大ケガしそうな感じでした。

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