ボローニャ歌劇場の来日公演・ビゼー「カルメン」(9/16 東京文化会館)の感想


ボローニャ歌劇場の来日公演・ビゼー「カルメン」(9/16 東京文化会館)の感想です。

2011-9-19

タイトルロールのニーノ・スルグラーゼですが、まずオペラ歌手らしからぬというくらい、ほっそりとスリムな体型が印象的でした。もともとは映画女優だったという経歴のメゾ・ソプラノとのことで、演技力も含めた舞台上の見栄えのする華やかさという点においては圧巻たるものがありましたし、歌唱技術も申し分なく、全幕とも安心してカルメンの歌を聴いていられる安定感も揺るぎないものでした。

反面、体型が細いせいか否か声量的には際立ったような印象ではなく、聴かせどころでのボリューム感が伸び切らないあたりが残念でしたし、いわゆる「ファム・ファタル」のイメージに関しても、スルグラーゼの演じるカルメンは爽やかで開放的すぎるキャラクタとして感じられてしまうため、男を地獄に引き摺り込む内面的な凄味のようなものは今一つ希薄だったような気もしました。少なくとも声量の豊かさやファム・ファタル的イメージに関しては昨年の新国立劇場でカルメンを演じたキルスティン・シャベスの方が良く出ていた感もありましたが、前述のようにスルグラーゼのカルメン像にも個性的な魅力が多く、舞台美術の美しさと相まって、まるで映画の一場面かと観ていて惹き込まれるような瞬間も多々ありました。

ドン・ホセ役マルセロ・アルバレスはヨナス・カウフマンの代役登板でしたが、間違いなく当夜の最高殊勲歌手でした。艶やかな美声から繰り出される歌心に満ちたアリアは全幕を通して一様に素晴らしく、とくに第2幕の「花の歌」は歌い終わるや盛大な拍手とブラボーが客席から暫く止みませんでしたし、少なくとも私が昨年に同じホールで聴いたトリノ王立歌劇場「ボエーム」の時のロドルフォよりも更に歌唱表現力ならびに高音域の表出力に磨きがかかったかとも感じられました。単に歌唱が優れているのみならず、このキャラクタの溢れるような情熱や抑えがたい衝動といった生々しい感情もリアルに抉り出されていて観ていて圧倒されんばかりでしたし、とにかく進境著しいテノールですので、今後の一層の活躍にも大いに期待したいところです。

エスカミーリョ役カイル・ケテルセンはドタキャンしたパウロ・ショットの代役で、練習不足だったのかもしれませんが、ぎこちない歌唱に伸びない声量と、正直あまりパッとしませんでした。ミカエラ役ヴァレンティーナ・コッラデッティは同じくドタキャンのアレッサンドラ・マリアネッリの代役でしたが、体型的にスルグラーゼとは対照的な太めのソプラノで、バランス的にどうなんだろうと観ていて思いましたが、歌唱はしっかりしていましたし、少なくとも代役の重責を果たすという点では十分な内容でした。

ミケーレ・マリオッティ指揮によるオーケストラの演奏は、全体的に管楽器の音程が甘かったりと、この前のMETの精緻なアンサンブル展開とは良くも悪くも性質の異なるものでしたが、プログラムに書かれていた、アンサンブルにおける弱音の表出力を重視したいという指揮者の方針のとおり、弱音だからといってサラッと流すような場面は皆無で、全幕を通し音楽の緊張感を途切れさせず、表情のメリハリ豊かな演奏を最後まで貫徹した点には率直に傾聴させられました。

演出に関してはいろいろと思うところがあるので後日に。

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