バーデン市劇場の来日公演・ビゼー歌劇「カルメン」(川口リリアホール 9/10)の感想


先日(9/10)の川口リリアホール、バーデン市劇場の来日公演・ビゼー歌劇「カルメン」の感想です。

2011-09-10b

舞台を観た印象を一言で言うと良くも悪くも「慎ましい舞台」。まずオケの編成ですが休憩時にピットを覗いてみたところ、弦の奏者がヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コンバス全部ふくめて10人程度という規模。当然その響きは一貫して薄め、必然フォルテッシモの迫力もさほどに伸びず、このオペラ特有の甘美なメロディラインの濃密な味わいという点もやはり厳しいという状況でした。

歌手に関しては歌唱技術的には充分でしたが押し並べて歌唱線が細く、高声に強さがなく、とくにカルメン役のロシア人メゾ・ソプラノであるソコロヴァはホールを制圧するような強力な歌唱には程遠く、なんとも慎ましい歌唱に終始しました。演出も、いかにも常套的でした。

これだけ書くと、いかにも物足りない、残念な舞台だったように取られるかもしれませんが、私は意外と新鮮な気持ちで、その歌と音楽を最後まで面白く聴きました。

というのも、これほど慎ましいオペラ公演の舞台というのが私には却って新鮮だったからです。「カルメン」は去年、新国立劇場で観ましたが、言うまでもなく今回のバーデンの「カルメン」とは雰囲気が大きく異なっていましたし、全体的に良くも悪くも抑制が効いているがゆえ、これみよがしに声を張り上げたり大音響をかましたり、という効果狙い型の舞台とは一味ちがった趣き、いわば抑制の効いた舞台だからこその、室内楽的なムードが醸し出す、秘めやかな音楽の味わいのようなものが、聴いているうちにジワジワとその独特の趣きを主張し始めました。

もちろん「カルメン」というオペラには、それこそ湧き立つような情熱の沸騰とか、むせ返るように濃密なメロディの訴えかけ、あるいは管弦楽のダイナミクスにおける強烈な起伏力などが大きくものをいう場面が多いのも事実。その観点においては正直はなはだ物足りない舞台であったことも、また否定できないと思います。

しかし視点を切り替え、前述のような独特ともいうべき音楽の慎ましさがもたらす美質に着眼する限りにおいて、意外にユニークな趣きの充溢する舞台と私には感じられました。来年は「トスカ」だそうですが、また行ってみようかと思っています。

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