キュッヒルによるバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ全曲


J.S.バッハ 無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ全曲
 キュッヒル(vn)
 PLATZ 2003年 PLCC766/7
PLCC-7667

先月のN響の定期演奏会では、ライナー・キュッヒルがコンサートマスターを務めました。客席で聴いていて、まず日本のオーケストラのコンマスの位置に、あのウィーン・フィルの現コンマスが座っているという光景それ自体に新鮮な印象を持ちましたが、なにより「英雄の生涯」で披歴されたヴァイオリン・ソロが忘れ難いものでした。

ライナー・キュッヒルと「英雄の生涯」に関しては、最近読んだカルロス・クライバーの伝記の中に、興味深いエピソードが掲載されていました(『英雄の生涯』をめぐる戦い)。

1993年5月のウィーン・フィルのコンサートにクライバーが登場するというので、彼が何を振るのかが注目されていたが、発表された演目は前半モーツァルトの交響曲第33番、後半リヒャルトの「英雄の生涯」というもので、とくに「英雄の生涯」の選曲に関しては多くの人が首をかしげ、オーケストラも賛否両論だったという。しかしコンサートは成功を収め、聴衆の熱狂のうちに幕を閉じた、、

この「英雄の生涯」は、本来ソニー・クラシカルからライヴ録音としてリリースされることが契約されていた。しかし最終的には日の目を見ないことになった。これはクライバーがリリース許可を出さなかったことが原因だが、この録音のリリースに最初に難を示したのは、実はキュッヒルだった、、

伝記に書かれているところによると、最初の段階ではクライバー自身は「英雄の生涯」の録音にリリース許諾を与えていたところが、キュッヒルが自分のヴァイオリン・ソロに不満があることを理由に、ソニー側にNGを出した。それでソロの部分を録り直した上でキュッヒルはOKを出したが、それに今度はクライバーの方がNGを出した。それで結局お蔵入りという流れに。

そのキュッヒルがソリストとして録音した数少ないCDのひとつが、このバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ全曲のCD。使用楽器はストラディヴァリウス「シャコンヌ」。

あまり話題にならない録音かもしれませんが、これほどストイックに、厳しく織り上げられたバッハも珍しい。名演だと思います。

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