メトロポリタン・オペラ来日公演プッチーニ「ラ・ボエーム」(NHKホール 6/11)


6/11 NHKホール
メトロポリタン・オペラ来日公演

プッチーニ「ラ・ボエーム」

2011-6-11 2011-6-11-2

指揮:ファビオ・ルイジ
演出:フランコ・ゼッフィレッリ

ミミ:バルバラ・フリットリ
ロドルフォ:ピョートル・ベチャワ
マルチェッロ:マリウシュ・クヴィエチェン
ショナール:エドワード・パークス
ムゼッタ:スザンナ・フィリップス

今回のメトロポリタン・オペラの来日公演で、おそらく歌劇場側は2つの難しい決断を迫られたのではないかと思います。ひとつは、今この時期に、オペラハウス引っ越し公演という大所帯で、本当に日本に行くべきなのか、という判断。もう一つが、公演開始一週間前という土壇場で看板のプリマが来日を断るというシビアなアクシデントにどう対応するか、という判断。

前者に関しては、なにしろ原発事故でレベル7やらメルトダウンやら騒がれている国への楽旅、普通は躊躇するでしょうし、実際、欧米のオケの多くは、予定されていた来日公演を次々にキャンセルしているわけで、そういう所へ敢えて来る、というのは、オペラハウスとしても相当の決断だったのではと思慮されますし、実はチケットを取っていた私も半信半疑でいましたが、ピーター・ゲルブ総裁の掲げた「目に見える形での“支援”と“連帯”の気持ちを必要としている日本の人々を勇気づけるために来日する」という言葉のとおり、来日公演を実現しました。この有言実行には敬意を表したいと思います。

後者。こちらも見事な対応でした。あらためて思いだされるのが、昨年に来日した英コヴェントガーデン歌劇場のことで、やはり今回と同じようにプリマ(ゲオルギュー)のドタキャンに見舞われました。今回のメトは、コヴェントガーデンが取った対応のようにサブの歌手をあてがうという安易な道に走らず、どうにかネトレプコと同格ともいうべき歌手を手配することに成功した。このため、もともと「ドン・カルロ」に出演予定だったフリットリをスライドさせた関係上、「ボエーム」以外の演目にも少なからぬ影響が出ることにもなったが、それでも敢えてそうした。

当然のようでいて、実際なかなか出来る処置ではないと思います。並のオペラハウスであれば公演がガタガタになってもおかしくない状況。オペラハウスとしての真価、本当の底力というのは、こういうときに得てしてものをいうのだなと、あらためて感じました。

もちろんネトレプコのキャンセルはガッカリです。だいたい、今回の公演のチケットを買ったのも、もともとネトレプコのミミが目当てでしたし、また今にして思えば、私はネトレプコを、昨年に聴く機会が2回もあり、今回も含めて3回も聴き逃している。前述のコヴェントガーデン来日公演で、ネトレプコが外題役の「マノン」かゲオルギューが外題役の「椿姫」、どちらを観るかで迷った(2つとも観ると足が出るから)が、ネトレプコは今年のメトの「ボエーム」を聴こうと思っていたので、「椿姫」を取ったところ、これが完全に裏目。ゲオルギューはキャンセルし、代役の歌手は聴いているのが気の毒なくらい、ボロボロの歌唱だった。それに危機感を抱いたコヴェントガーデンは、「マノン」のネトレプコを「椿姫」の千秋楽に登板させ、なんとか日本公演の体面を取り繕った。

もし私が「マノン」を選ぶか「椿姫」最終日のチケットを取るかしていたら、そこでネトレプコを聴けていたはずだった。そして今回のキャンセル。これだけ重なると、さすがに私はネトレプコの実演には、たぶん今後も縁がないのかもしれない。

今日のフリットリのミミは、昨年のトリノ王立歌劇場「ボエーム」でフリットリが歌った同役の歌唱と同じくらいの素晴らしさ、とまでは正直いきませんでしたが、それでも十分すぎるものでしたし、ロドルフォ以下の歌唱陣も満足のいくものでした。ファビオ・ルイジの指揮は聴いていて鳥肌が立ちました。ゼッフィレッリ演出の素晴らしさは言わずもがな。そして何より、このメトロポリタン・オペラという、世界屈指の歌劇場の地力をまざまざと見せつけられたという点では、私が近年に接した欧米のオペラハウス引っ越し公演の中でも、ひときわ大きな感銘を受けた公演でした。

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