引き続き、黒澤明の映画におけるクラシック音楽


今回は原曲をアレンジしたメロディが使われているケースと、映画作品のコンセプト自体としてクラシックの曲が使われているケースについて思いつく限りで。

①ラベル 「ボレロ」

「羅生門」の中の、ある戦慄的なシーンにおいて、ラヴェルの「ボレロ」をアレンジした音楽が流れます。

②ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」

「七人の侍」という映画自体を黒澤監督はドヴォルザークの新世界に喩えています。

③ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」

「赤ひげ」の基本理念として黒澤監督はベートーヴェンの第九を掲げています。

④ハイドン 交響曲第94番「驚愕」

同じく「赤ひげ」で、加山雄三が演じる医師を少女が看病する感動的なシーンで、ハイドン「驚愕」の第2楽章のメロディがアレンジされて流されます。

⑤ブラームス 交響曲第1番

同じく「赤ひげ」のメインテーマ曲として、この交響曲の最終楽章の中心主題のメロディがアレンジされて用いられています。

⑥マーラー 交響曲第1番「巨人」

「乱」のラストでの葬送の場面で、この交響曲の第3楽章のメロディがアレンジされて用いられています。

以上のうち②と⑤は少し知られざるところかもしれません。

②は昨年に出版された四方田犬彦・著「『七人の侍』と現代――黒澤明 再考」 に書かれています(P.66)。

⑤は都築政昭「黒澤明と『赤ひげ』」の中で以下のように言及されています。

音楽担当の佐藤勝は、黒澤との作曲打合せの時、前述のようにいきなりベートーヴェンの第九のレコードを聞かされた。そして黒澤は「無味無臭の音楽を書いてくれないか」と言った。・・・佐藤は「第九」と「無味無臭」という黒澤の言葉の呪縛に苦しんだ。
・・・
 それがブラームスの第1交響曲に似た「保本登のテーマ」となった。ブラームスの第1番はベートーヴェンの不滅の9曲につぐ「第10番」だとさえ言われ、ベートーヴェン風の「暗黒から光明へ」の精神的闘争がテーマであり、特に第4楽章の主要主題がベートーヴェンの第九の“歓喜の合唱”の主題とよく似ているのである。黒澤の第九の呪縛の中にあった佐藤が、ブラームスの第1番に似た音楽を書いたのも自然であろう。
 この「保本登のテーマ」は、冒頭とラストで、また幾多の試練を克服して前向きに歩み出す人生の節々に静かに、優しく、力強く、そして激しく鳴り響く。

        都築政昭「黒澤明と『赤ひげ』」P.122

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