ロシア国立交響楽団の来日公演(5/28 サントリーホール)


5/28 サントリーホール
ロシア国立交響楽団 来日公演

2011-5-28

指揮:マルク・ゴレンシュタイン

演目:
グラズノフ バレエ音楽「ライモンダ」より3つの小品
ショスタコーヴィチ チェロ協奏曲第1番
(チェロ:アレクサンドル・ブズロフ)
ラフマニノフ 交響曲第2番

アンコール:
J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲第3番よりサラバンド
ラフマニノフ ヴォカリーズ

名門ロシア国立交響楽団の、実に14年ぶりの来日公演とのことです(それがまた、どえらい時期に当たってしまったものですが)。この時期にヨーロッパのオーケストラがフル編成で果敢に来日を果たした、その心意気に敬意を表しつつ聴きに行きました。

オーケストラは通常配置、編成はショスタコーヴィチが14型でグラズノフとラフマニノフが16型でしたが、後者はチェロ奏者が12人、つまり16-14-12-12-8という、やや低弦に厚みを持たせたバランスでした。

まずグラズノフのバレエ音楽「ライモンダ」より、第3幕への間奏曲、グランド・ワルツ、スペインの踊りが演奏されました。これは初っぱなの挨拶代わりに強烈なのを一発と言わんばかり、アンサンブルの鳴りっぷりが豪快なものでしたが、しかし豪快一辺倒というのとも、また違っていました。

ゴレンシュタインはスコアなど不要と言わんばかり暗譜で指揮していましたが、どんな強奏であろうと絶えないアンサンブルの強力な一体感、あるいは音楽に対する強い共感に裏打ちされた、個々のメロディの濃厚な歌われ方、ハーモニーの意外なくらいのキメの細かさなど、これがオーケストラにとって自家薬籠中の作品であるということを聴き手に強く印象づける、その意味で本場の名に相応しい演奏でしたし、聴いていて爽快な気分に誘われました。しかしスヴェトラーノフ時代には、もっと凄かったのでしょうか、うーむ、、、

続いてアレクサンドル・ブズロフをチェロ独奏に迎え、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番が演奏されました。なお、本来の独奏者はアレクサンドル・クニャーゼフが予定されていましたが、キャンセルとなりました。

ブズロフというチェリストは初めて聞く名前でしたし、クニャーゼフの降板にガッカリしていたしで(今年の2月に同じホールで聴いたドボコンの実演が素晴らしかったから)、この演奏には正直、それほどの期待は抱いていませんでした。

ところが演奏が始まるや度肝を抜かされました。まず、いきなり暗譜でバリバリ弾き始めたことに驚きましたし(ここではゴレンシュタインの方は対照的にスコアを丹念に見ながらの指揮ぶり)、弾きっぷりにしても実にアグレッシヴで、その積極果敢なボウイングの切れ味は素晴らしいばかり、それでいてテクニックは正確無比、このロストロポーヴィチを想定して書かれたという難曲を危うげなく弾き切り、この作品特有の屈折した情熱味も仮借なく表現されているあたりも、聴いていて思わず唸らされましたが、なにより作品に対する没入の度合い、のめり込み方がハンパでない。

休憩時にロビーで購入した公演プログラム掲載のプロフィールによると、ブズロフはモスクワ音楽院で学びナターリャ・グートマンに師事とありました。クニャーゼフのような鬼才タイプではなく、もってまわらない真っ直ぐな表現を信条とする演奏家という印象を実演から受けましたが、あのグートマンの弟子と知ってなるほどと思いました。

後半のラフマニノフ交響曲第2番は、提示部反復こそ省かれましたが、それでも演奏タイム1時間に及ぶ大演奏。前述のように低弦に厚みを含ませたアンサンブル編成から展開される、実にコッテリと濃厚な弦のハーモニー、これに金管のズッシリと重厚な吹き回しと、木管の図太くて味の濃い音色、これらが絶妙に合流し、文字通りロシア本場を地でいく濃密なラフマニノフの響きがホールに充溢する様は、大いに傾聴に値するものでしたが、ただ聴いていてどうにも気になった、というか正直あまり感心しなかったのが、ゴレンシュタインの演奏スタイル。

徹底した定速テンポ型の運用でした。第1楽章の中盤の山場でも思いきった加速を仕掛けるでなく、さりとてテンポを落として情緒を強調するでもなく、コーダのクライマックスでさえ定速進行という、とにかくイン・テンポで押し通すスタイルで、それゆえ確かに、このうえなく音楽の格調が高く、なるほど本場のラフマニノフとは本来こういうものかもしれないと思えなくもないものでしたが、その反面において、音楽の動きが全体的に杓子定規のようで柔軟性に欠け、ずいぶん表情が堅いなという印象も強く、ちょっと「様式」に拘り過ぎではないかと思ってしまいました。

そもそもラフマニノフの2番をどれほど格調高く演奏しようともドイツ音楽のようにはならないと思うし、むしろアンサンブルの進行に適度なうねりを持たせた方が曲調が引き立ち、ひいてはオケ特有の濃い響きの個性感にもシンクロするように思えますし、特にスヴェトラーノフの薫陶を受けた、このオケならそういうスタイルの方が向いているのではないかと思ってしまいます。このあたりは私の好みに過ぎないので、演奏自体が立派であるということに変わりはありませんが、、

最後にゴレンシュタインが「東日本大震災の被災者に捧げます」と、日本語で聴衆に告げ、アンコール曲としてラフマニノフのヴォカリーズが粛然と演奏されました。

コメント

 
私もPブロックで聞いておりました。スヴェトラーノフとのコンビで聞いたのが(なんと)14年前。オケの音色がすっかり変わったのには驚きました。スヴェトラーノフ時代の豪快さ(悪く言えば金管の無闇な咆哮に辟易)は無くなったとは言え、スヴェトラーニフの元でヴァイオリン奏者としての経験がある指揮者だけにツボは心得た良い意味でのロシアのオケに変身したように思いました。
りゅうたろう様 コメント有難うございます。

私はスヴェトラーノフの実演を未体験ですので、そのあたりの実感が湧きにくいのですが、スヴェトラーノフ時代は(色々な意味で)もっと凄かったんだろうなあという印象は、何となくですが客席で聴いていて感じました。

ゴレンシュタインのスタイルは、造型的には正調を地でいく行き方で、いわゆる爆演には程遠いものでした。良くも悪くも、スヴェトラーノフ時代は遠くなりにけり、でしょうか。

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