バシュメット/モスクワ・ソロイスツ来日公演(5/22 東京オペラシティ・コンサートホール)


5/22 東京オペラシティ・コンサートホール
モスクワ・ソロイスツ合奏団 来日公演

2011-05-22

指揮:ユーリ・バシュメット

ヴァイオリン:アリョーナ・バーエワ
ヴィオラ:ユーリ・バシュメット
ピアノ:クセーニャ・バシュメット

演目:
メンデルスゾーン ヴァイオリンとピアノのための協奏曲
パガニーニ カプリース第21、9、24番(弦合奏付き編曲版)
パガニーニ ヴィオラ協奏曲
チャイコフスキー 弦楽セレナード

アンコール:
武満徹 映画「他人の顔」より「ワルツ」
シュニトケ ポルカ
ベンダー グラーヴェ

東日本大震災に端を発した、福島原発の放射能漏れ事故、先月のレベル7宣言、そして先週のメルトダウン報道などから、ヨーロッパ各国のオーケストラが軒並み来日公演を取り止める事態となっているなか、ユーリ・バシュメット率いるモスクワ・ソロイスツ合奏団の来日公演が予定どおり開催されるということで、聴きに行きました。

弦のみのアンサンブルは通常配置で、全曲ともファーストヴァイオリン4名という規模でしたが、セカンドヴァイオリンが3名なのに対し、ヴィオラが4~5名という、やや変則的なバランスでした。

まずメンデルスゾーンの、ヴァイオリンとピアノのための協奏曲が、アリョーナ・バーエワ(ヴァイオリン)とクセーニャ・バシュメット(ピアノ)を独奏者として演奏されました。これはメンデルスゾーン弱冠14歳の作品で、サロン・コンサートで演奏するために作曲されたものですが、ここでの独奏者両名の演奏たるや目覚ましく、特に第1楽章の中盤から終盤にかけての、白熱的な音楽の高潮など、とてもサロン音楽とは思えないほどのものでしたが、それでもやはり、サロン音楽としての表出力の限界が、特に第2楽章と終楽章で正直それなりに意識されてしまいましたし、せっかくの独奏者の見事な表現力を全開とするには、いささか曲の器が小さすぎた感も否めませんでした。

続いてパガニーニ「24のカプリース」より第21、9、24番が、引き続きアリョーナ・バーエワをヴァイオリン独奏として演奏されました。本来パガニーニの「24のカプリース」は無伴奏ヴァイオリンのための作品ですが、それを弦楽合奏付きに編曲したデニーソフ編曲版での演奏で、これは初めて耳にするものでしたが、弦楽合奏は基本的に伴奏に徹し、あくまで主役はヴァイオリン独奏という構えとなっていて、原曲の超絶的なヴァイオリン技巧の持ち味をそのままに、音楽的に巧く厚みを持たせたような感じが新鮮で、こういうのもアリだなと思いましたし、バーエワの溌剌とした弾き回しは、ラテン的なパッションというよりはスラブ的ともいうべき真摯な情熱を帯びたものとして切々とホールに響き渡り、聴き応え満点でした。

休憩をはさんで、ユーリ・バシュメットの弾き振りで、パガニーニのヴィオラ協奏曲が披露されましたが、これは公演プログラムの作品解説によりますと、パガニーニが作曲した「ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロとギターのための四重奏曲第15番」をモスクワ・ソロイスツのメンバーであるバラショフとカッツがヴィオラ協奏曲に編曲したものである、とのことです。ここではヴィオラ独奏者として世界的名手であるバシュメットの面目躍如たる、非の打ちどころのない演奏技術力に裏打ちされた、まさに貫禄の演奏ぶりでした。敢えて言うなら、パガニーニの音楽の色と、合奏団のストイックな響きの性格とが、微妙にミスマッチかなと思えなくもありませんでしたが、それを言うのは野暮というものかもしれません。

最後は、チャイコフスキーの弦楽セレナード。この曲で4型?と、最初は正直いぶかりましたが、聴いてみると、まずテンポの動きに関しては、最初こそ重く引き摺るように始められたものの、おしなべて柔軟な緩急の運用で、型に嵌った感じの演奏とは一味も二味も異なる、まさしく小編成ならではの、フレキシブルなアンサンブルの機動力が素晴らしいものでしたし、それ以上に、アンサンブルの僅か16人の奏者が、それこそ一心同体ともいうべき強固な一体感をもって、切々とメロディを奏でていく音楽の様相に、何とも言えない感銘を覚えました。そして、小人数とは思えないほど、実に濃厚で、芳醇な響きに満ちた演奏でした。オペラシティ・コンサートホールの潤沢な残響特性が、プレイヤーの人数の少なさを音響的に補っていたのかもしれませんが、やはりアンサンブルが「自分たちの音楽」として作品を知悉しているという、アンサンブルとしてのポテンシャルが、これほどの演奏を可能にしていたような気がします。心に沁み入る、まさに本場のチャイコフスキーでした。

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