インバル/都響の演奏会(5/11 サントリーホール)の感想


昨日(5/11)のサントリーホール、インバル/都響の演奏会の感想です。

前半のシューベルト交響曲第5番は、全体的に速めのテンポで、サクサクと快適に進んでいき、インバルにしては仕掛けの少ない表現とも思えましたが、ケレンミのない音楽の進め方から、この作品の愛らしい旋律美、エレガントな気品など、いずれも過不足なく表現されていて、聴いていて素直な視点から作品を楽しめましたし、およそコワモテの指揮者という印象のあるインバルの、また意外な側面を垣間見たような気もしました。

30分という長めの休憩を挟んで、リヒャルト・シュトラウス「英雄の生涯」が演奏されましたが、これは大変に熱の入った演奏であるとともに、この曲がそれこそマーラーの交響曲にも一脈通ずる凄味を湛えた音楽作品であるという観点を聴き手に開陳するような凄演でもあり、このコンビの並はずれた表現力をあらためて思い知らされました。

たまたま「英雄の生涯」を、私は3日前にN響の演奏会で聴いたばかりでしたが、ことオーケストラの演奏に関しては、私としては昨日のインバル/都響の方に、聴いていて多く惹かれるものがありました。というのは、N響の「英雄の生涯」の方は確かに、この作品の華麗にして複雑に入り組んだオーケストレーションの醍醐味を過不足無く音響化する、という点では、それこそ満点に近い演奏内容でしたが、「英雄の戦い」のようなクライマックスにおいてさえ、やはりスコアに書かれていることを過不足無く音響化する、という域を踏みださず、それゆえ何か作品の講釈を聴かされているようで、正直さほど演奏に感心することなく、それほど音楽にのめり込むこともできなかったのに対し、昨日のインバル/都響のそれは、まず細大漏らさぬ緻密なアンサンブル処理から繰り出される、覚醒的な音響の緊迫感が素晴らしく、ここぞというクライマックスではアクセルを思い切りよく踏み込み、熾烈な音響の充溢を躊躇しないという、強メリハリ型の表現スタイルであったがゆえに、このリヒャルトの交響詩に潜在するところの猛々しい感情の奔流が強度のリアリズムを帯びて聴き手に迫ってくるような演奏にまで昇華されていたように思われたからです。

その意味で、この「英雄の生涯」はマーラーを得意とするインバルの面目躍如たる演奏ではないかと思えましたし、そのインバルの指導で鍛えられた都響のアンサンブルの優れたレスポンスもまた絶賛に値するものであったと思います。

オケの配置は通常型、編成はシューベルトが12型、リヒャルトが16型でした。

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