N響の定期演奏会(5/8 NHKホール)


5/8 NHKホール
NHK交響楽団 定期演奏会

2011-5-8

指揮:尾高忠明
コンサートマスター:ライナー・キュッヒル

演目:
尾高尚忠 交響曲第1番
R.シュトラウス 交響詩「英雄の生涯」

ゲスト・コンサートマスターにライナー・キュッヒルを迎えての公演、これは聴いてみたいと思いホールに赴きました。

オケの編成と配置は前後半ともVn-Va対向配置の16型。前半の演目は尾高尚忠(本日の指揮者・尾高忠明の父親)の交響曲第1番。1948年に作曲された未完の交響曲であり、従来は第1楽章のみの完成とされてきたところ、近年になって第2楽章が発見されたとのことで、本日も2楽章版での演奏でした。演奏タイムは第1楽章が約20分、第2楽章が約10分という配分で、完成されていたら1時間規模の大曲となっていたはず。

なかなか面白く聴きました。作風としては明らかに後期ロマン派風、印象としては、マーラーのシンフォニー様式という器に、リヒャルト・シュトラウスを思わせる雄弁な音楽を盛り込みつつ、随所に日本的な陰影を思わせる雅やかな色彩で味付けした、という、乱暴に言ってしまえば、そんな音楽。

もっとも、この作品は作曲の経緯からして平和への祈念、という意味合いが厳然とあるようで、そのあたりの切実な訴えもまた、時に容赦なく熾烈な打楽器の激打を伴い、聴き手の胸を鋭く抉るものでした。娯楽色と、音楽としての含蓄、そのあたりのバランスの調和もまた、この作品を聴く醍醐味の一つではないか、と聴き終えて感じました。

後半のリヒャルト・シュトラウス「英雄の生涯」では、あらためてキュッヒルのヴァイオリン・ソロの表現力に感服させられました。

世界中のオーケストラのコンサートマスターの、試金石のひとつとされるのが、この交響詩の中盤で英雄にエールを送る愛人を演じる、ヴァイオリン・ソロであると、よく言われますが、ここはキュッヒルにとっても今日のコンサートでの最大の見せ場にほかならない場面。しかし、ここで彼が披歴したのは、何ら気負いも力みもない、文字通り自然体というべきボウイングでした。

それでいて個々のメロディを実に表情豊かに奏でていく、、流暢に、雄弁に。単に美しいというに留まらない、深い奥行きのフレージングと包容力のある音色、そこから紡がれる慈愛に満ちた旋律の流れ、いずれも素晴らしいものでした。

キュッヒルの実演を聴くのは昨年11月のサントリーホールでのウィーン・フィル来日公演以来ですが、近年のウィーン・フィル来日公演がサントリーホール限定みたいなことになっている関係上、NHKホールで耳にする彼のヴァイオリンの、輪郭のくっきりとした、凛然とした色彩というのも、私には随分と新鮮に思えました。

N響の演奏に関しては、こういった規模の大編成の難曲となれば、やはり得意分野というべきなのか、実に上手い演奏でした。

少なくとも、この作品の複雑に入り組んだ、華麗なオーケストレーションの醍醐味を過不足無く音響化する、という点では、それこそ百点満点に近い演奏内容だったと思いました。が、聴いていてN響はどこまで本気を出しているのだろう、という疑問が最後まで払拭できなかったのも事実。もし、これが本気だとしたら、それはそれで困る、というようなポテンシャルを持つオーケストラ、それがN響だと、私は思っています。

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