ブリュッヘン/18世紀オーケストラによるベートーヴェン交響曲第1番と第3番「英雄」


ベートーヴェン 交響曲第1番、第3番「英雄」
 ブリュッヘン/18世紀オーケストラ
 フィリップス 1984年・87年ライヴ PHCP10553
PHCP10553

昨日の続きですが、一昨日(2/8)すみだトリフォニーホールでのブリュッヘン/新日本フィルの演奏会(ベートーヴェンの交響曲第1番・第2番・第3番「英雄」)は、私にとっての「ブリュッヘンのベートーヴェン」体験としては3番目の段階となるものでした。

その1番目の段階はブリュッヘンが80年代に18世紀オーケストラを指揮して録音した、例のベートーヴェン交響曲全集です。当時ノリントンやホグウッドも同じ時期に手兵のピリオドオケを指揮してベートーヴェン交響曲の全曲を録音中でしたが、それらと比べてもブリュッヘン/18世紀オーケストラのそれは格段に響きが洗練されていましたし、その洗練味の中に浮かび上がる荒ぶる表出力の高まりもすこぶる印象的でした。

その全9曲の録音の中でも特に素晴らしい印象を与えられるのが、このディスクに収録されている交響曲第1番と第3番「英雄」の2曲です。この2曲に関してはブリュッヘン自身が特別の思い入れを持っているとのことで、まずベートーヴェン交響曲第1番は1984年に18世紀オーケストラ自体のファーストレコーディングの演目としてブリュッヘンが選んだ曲ですし、「英雄」に関してはブリュッヘンが18世紀オーケストラを設立した際に目標とした曲だったと語っています。

この「英雄」においてブリュッヘンは、緩急のレンジを比較的おおきめに取ったダイナミックなテンポで造型(この点は一昨日の新日本フィルとの演奏会でも概ね同じ行き方でした)しながら、随所で金管・打楽器による劇的な強奏強打を加えた、スリリングな緊張と、ピリオド楽器ならではの繊細な肌触りの音色を特徴とする趣きの深い演奏内容となっていますが、とにかく私はこのブリュッヘンの「英雄」は素晴らしいと思っていたので、2002年の秋にブリュッヘン率いる18世紀オーケストラの来日公演がありベートーヴェンの交響曲の全曲チクルスが行われた際、特に「英雄」がかかる公演を選んで東京芸術劇場に聴きに行きました。

2002-11-7

このときブリュッヘン指揮する18世紀オーケストラの生演奏を聴いた印象はとても強烈でした。大体ベートーヴェンの交響曲の、この部分が、ピリオドオケの実演だとこんなバランスで聴こえるのか!、といった驚きと、ノンビブラート&低ピッチをはじめとするピリオド楽器特有のハーモニーの特徴(当時の私の耳にはかなり異彩に響いた)、それにアンサンブル各奏者の練達ともいうべき演奏テクニックの冴えとか、そういったものに聴いていて強烈に魅了された公演でした。

それでも十数年前の彼らの録音よりは尖鋭性が多少は後退し、解釈が丸みを帯びている印象もあり、かれらの演奏が円熟期を迎えたことを印象づけるものでもありましたが、それが却って様々な相反する(尖鋭と円熟との)要素が内部で融合し一種独特の風貌や深度を音楽に与えていたように、少なくとも当時の私には思われました。

この2002年の公演が私にとっての「ブリュッヘンのベートーヴェン」体験としては2番目の段階であり、一昨日のすみだでの公演が3番目の段階でした。そして、この先さらに円熟と深みを増した4番目の段階が訪れる日も、また将来あるような気がしています。

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