エンゲラーによるリストの「詩的で宗教的な調べ」全曲


リスト 「詩的で宗教的な調べ」全曲
 エンゲラー(pf)
 MIRARE 2010年 MIR084
MIR084

仏MIRAREから先月リリースされた、ブリジット・エンゲラーのピアノ演奏によるリスト「詩的で宗教的な調べ」全曲のCDを聴きました。

ブリジット・エンゲラーといえば私はラ・フォル・ジュルネ東京音楽祭で2008年から3年連続で生演奏に接していますが、とくに昨年は2つの公演でリストの3曲(弦楽のための「夕べの鐘、守護天使への祈り」、「詩的で宗教的な調べ」より葬送、十字架への道)を耳にし、あらためて彼女のピアニズムに対する感銘を深めました。

今回リリースされた新譜には、そこで披歴された3曲のうちのひとつ「葬送」が含まれていることもあり、さっそく購入しました。

それで聴いてみると、このリストはまさにリスト弾きとしてのエンゲラーのピアニズムの持つ掛け替えのない魅力の充溢する演奏であり、その素晴らしい演奏内容に聴いていて心洗われるような清々しい感懐を禁じ得ませんでした。

そしてリストの本当に素晴らしい演奏というのは実に高貴な清らかさを内包するものであるという事実をあらためて認識させられた演奏でした。それは何も本作品が文学を題材とするものだからとか、もともとピアノの圧倒的なテクニシャン向けに書かれているからとか、そういう表面的なことではおそらくなく、まるで人智を超越した深い瞑想の中に佇むかような、この作品固有としか言いようのない一種独特の諧調それ自体がそういう気分に聴き手を誘うのではないかと思われますし、このエンゲラーの弾く荘厳なリストを耳にすると、リストのピアノ音楽に対してよく言われるような華麗な技巧の極致だとか悪魔的なムードだとかいう言葉が、この偉大な作曲家の音楽の本質に対して何と貧相というか的外れな形容に過ぎないかという風にも思えてきます。無論それは演奏するピアニストの作品に対する深々とした共鳴の心情あってのことなのでしょう。

2011年の今年はフランツ・リスト生誕200年にあたる年ということで、この作曲家の音楽に接する機会も例年以上に増えそうです。

コメント

 

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog
Copyright © クラシックCD感想メモ All Rights Reserved.