アルミンク/新日本フィルの演奏会(サントリーホール 1/26)の感想


昨日(1/26)のサントリーホール、アルミンク/新日本フィルの演奏会の感想です。

オーケストラの配置は第1ヴァイオリンとヴィオラを対向させたドイツ式、弦の編成はラヴェルとフランクが15-14-12-10-8、対してプーランクでは8-8-4-4-4という変わったパターンでしたが、これはそのようにスコアで定められているとのことです。

最初のラヴェル「高雅で感傷的なワルツ」ですが、アルミンクによるアンサンブルのコントロールは全体的にデリケートで入念を極めていて、この作品のもつエレガントな気品、そこに宿る儚いくらいに透明な美しさなどが過不足なく描き出されていましたし、ときにはラヴェルの音楽にたゆたう抑制されたリリシズムまでも眼に見えるかのような、実に明晰な美しさを満たしたオーケストラの響きに、それこそ酔わされるような感覚で音楽に惹き込まれました。

続くプーランクの「2台のピアノと管弦楽のための協奏曲」は、実演で聴いたのは初めてでした。ここではトルコ出身の双子の姉妹であるフェルハン&フェルザン・エンダーの2人のピアニストの、息のあった掛け合いの妙が素晴らしく、アルミンクのアンサンブル展開においても気品あるエレガンシーと旺盛なヴァイタリティとを巧みに使い分け、時に華麗に、時にワイルドに、音楽の呼吸に寄り添いながらピアノを盛り立てながら、作品のムードを余すところなく描き出し、そのワクワクするような愉悦味、それに独特のメロディの美しさに、聴いていて惹き込まれっぱなしでしたし、エンダー姉妹のアンコールのピアソラもまた絶妙でした。

後半のフランクの交響曲ですが、ここでは全体に比較的スピーディーなテンポで淡々と進められ、とくに重々しい素振りをみせることもなく、概ね堅実なフレージング運用から実に整然として美しいアンサンブル展開が披歴されました。それは極めて周到で妥当な解釈であるがゆえに、聴いていて音楽生来の持つ局所的な音響面の美しさに、率直に惹きつけられる瞬間も多く、時には音楽の持つ内奥の美まで抽出し聴き手に明晰に伝達するようにさえ聴いていて感じられたほどでした。

ただ正直なところ、それでもこの交響曲に含まれる音楽のドラマを十全に描き切るまでの演奏ではなかったなという、幾ばくかの物足りなさも残りました。おそらく当夜の演奏は「美の極致」というコンセプトが掲げられていたこともあってか、おおむねフランス音楽的な視点でのハーモニーの美しさなり、メロディの麗しさ、アンサンブル全体としての馥郁たる響きの捻出という観点においては十分に練り上げられた演奏と思われましたが、フランクのシンフォニーには、そういったフランス音楽的な美感を超越し、むしろドイツ音楽への力強い接近を示すような、ロマン派の音楽としての仄暗い情念なり、たぎるような情熱の発露なりが不可分に同居する作品というイメージもまた、私の中にあるところ、そういった側面の強調が当夜のアルミンクの表現においては押し並べて大人しく(それは無論「美の極致」という方向性での演奏であれば正解であったとしても)、その点で聴いていて正直もうひとつ音楽に乗り切れないような、そんな軽い違和感が残らなくもありませんでした。

しかしコンセプトに沿った表現という観点では非の打ちどころのない演奏内容と思われた以上、それは本来それで十分なのかもしれませんし、それ以上の望みは筋違いであるのかもしれません。

ところで、当夜の3曲をプログラムに並べたアルミンクの発想それ自体を、私はとても面白いと思いました。つまり、一見フランス音楽系統の作品を3つ並べているように見えて、それらの楽想の源泉を辿ると実は3曲いずれも「ウィーン」に行き着くという視点です。

その事実に思い至ったのが、ちょうどブーランクのコンチェルトを聴いていた時でした。その第2楽章の出だしが、あまりにもモーツァルトそっくりだったものですから、ああやっぱりこの曲は、プーランクのモーツァルトへの敬愛の念が非常に明確な形で出ているなと改めて実感させられましたが、そういえば先刻のラヴェル「高雅で感傷的なワルツ」も、シューベルトの2つのワルツ集がモデルですし、この後のフランクの交響曲も、その楽想のベースにはベートーヴェンの音楽への強固なリスペクトがあるとよく指摘されています。

であれば、3曲ともにウィーン古典派の系統に属する作曲家の音楽からの、明示的な着想がベースとなっていることになります。これが単なる偶然だと思えないのは、なにより当夜の指揮者アルミンク自身もまたウィーンの指揮者であるからです。これだけ「ウィーン」が重なった日には、これはもう必然的理由があると考えた方が合理的で、要するに当夜のプログラムはフランス音楽系の作品という「表の顔」と、それらの楽想の源流を辿るとウィーン古典派系統の作曲家に行き着くという「裏の顔」とを併せ持つという、なかなかに鮮やかなプログラムと私には映りましたし、それできっちり2時間のプログラムを組むコンサートビルダーとしてのアルミンクの構想力もまた私には鮮やかなものとして映りました。

コメント

 

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog
Copyright © クラシックCD感想メモ All Rights Reserved.