引き続き、ガーディナー/オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティークによるブラームスの交響曲第4番


ブラームス 交響曲第4番ほか
 ガーディナー/オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク
 ソリ・デオ・グローリア 2008年ライヴ SDG705
SDG705

昨日の続きとしまして、CDを聴いての感想です。

まずアルバムとしての配曲のバランスが毎度のことながら絶妙です。最初のベートーヴェンのコリオラン序曲の終和音が消えるかというタイミングで始まるガブリエリの宗教曲の神秘的な味わいなど、まず本CD以外で耳にすることはないと思いますし、ガブリエリやシュッツの宗教曲の直ぐ後にブラームスの宗教曲を耳にすることで、それら時代を超えた作品相互の類似的な関連性がうっすらと透けて見えたり、ブラームスの「祭典と記念の格言」でのアーメンコーラスが終るや、ひそやかに交響曲第4番の第1楽章が始まるあたりの、あたかも映画のモンタージュ技法を彷彿とさせる、音楽の大胆な場面転換のインパクトなども、このアルバムならではの掛け替えのない聴きものだと思います。

アルバムのメインとなる交響曲第4番の演奏については、これまでリリースの交響曲第1~3番と概ね同様のアプローチと感じられ、全楽章を通して管パートの音色の張りが際立っている点、対して弦楽器の方は重厚さこそ薄いが強靭な音色の切れ味が鋭く、ティンパニの音立ちもパリッとしていて、最先端のピリオドオーケストラならではの洗練された音楽の迫力がコンスタントに立ち現われています。

テンポ面に関しては、例えば第1楽章の楽章タイム11秒ジャストは往年のトスカニーニ並みの高速進行となっていますし、同楽章コーダなど、ここぞという時にはアンサンブルの限界に挑むかのような猛烈を極めるアッチェレランドを仕掛けて迫真の表情を生ぜしめます。第3楽章なども凄い迫力で音楽が突進し、なるほどこれは確かにブラームスがベートーヴェンに触発されたような趣きが濃厚だなと聴いていて納得させられてしまうほどです。

その反面、こと完成度という点においては、ライヴ取りゆえのムラとも思えるようなシーンが時おり耳につくのも事実ですし、ピリオドオーケストラならではの繊細なニュアンスの表出にも難があり、迫力があるだけでない精緻さというものが足りないかなと思われる点、また怒涛のような音の奔流に埋もれて、それなりに細部の機微が阻害されている点は少し気になりますし、あるいはガーディナーの流儀というか、ブラームスに対するポリシーに由来するのか、ほぼハイテンポをベースに造型が組まれているため、メロディを歌謡的に歌い込むシーンでのフレージングの息の短さが気になる、など、聴いていて気になる点も幾つかあるにはありました。

しかし、今回の交響曲第4番の演奏も含め、これまでガーディナーのブラームスシリーズを耳にして私が毎回のように感じたのは、ピリオドアンサンブルによるオーセンティックな表現であるという事実を決して金科玉条のように振りかざさない、およそ無味乾燥な学問的な考証という域を大きく超えた、多くの聴き手にダイナミックに訴えてくるエモーショナルな表出力を備えているという点が何よりの美質ではないかということです。

そして、そこにはピリオドオーケストラにとっての新たな地平を開拓せんというようなガーディナーの並々ならない気概があるのではないかと思います。少なくとも、ピリオドオーケストラの演奏によるブラームスの交響曲全集の録音としては、これまでノリントン指揮ロンドン・クラシカルプレイヤーズ盤しか選択肢が無かったところですが、そこから音響的な洗練を飛躍的に推し進めた、今回のガーディナー/ORRの登場は、ロマン派の音楽に対する表現の多様性が更に広がる可能性を示した点でも大きな成果であるような気がします。

むろん単に既出の録音との差別化という点だけでなく(その意義は大きいとしても)、バッハに端を発してモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトから、シューマンあたりまで開拓されたピリオドオーケストラの演奏領域が、今後ブラームスを超えてマーラーあたりにまで行き着くのか、どうか、現状では不確定ですが、いずれにしても「当時の楽器で」演奏されるということの意義を考えた場合、当時の聴衆の耳にはこんな風に響いたであろう感覚の追体験というだけでも我々聴き手に取って掛け替えのない意義があるように私には思えます。

以上、これでブラームスの全4曲のシンフォニーの録音をコンプリートし、晴れてシリーズ満了、かと思いきや今後のリリース予定としてブラームスのドイツ・レクイエムも入っているとのことです。今度はどんなアルバム構成を打ち出してくるか、興味をそそられます。

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