スクロヴァチェフスキ/読売日響によるブルックナーの交響曲第8番


ブルックナー 交響曲第8番
 スクロヴァチェフスキ/読売日本交響楽団
 DENON 2010年ライヴ COGQ478
COGQ478

DENONから先月リリースされた、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮、読売日本交響楽団の演奏によるブルックナー交響曲第8番のCDを聴きました。

このブルックナーは2010年3月25日の東京オペラシティ・コンサートホールにおける、スクロヴァチェフスキ(以下ミスターS)の読売日響常任指揮者としての最終公演のライヴです。

ミスターSが読売日響を指揮したブルックナーとしては今年2月に発売された交響曲第9番のライヴに続いてのリリースということになりますが、その前回のブル9は私自身がコンサートで耳にした超絶的な実演のライヴ・リリースということもあって、発売されるや飛び付くように購入し、聴いてみたら紛れもなく昨年のコンサートの印象そのままの形で演奏が収録されていたことに狂喜乱舞したことを以前ブログに書きました

対して今回リリースのブル8ですが、私は前述のミスターSの常任ポスト最終公演に足を運んでいますが、それは本CD収録の演奏会の翌日(3月26日)の、サントリーホールでの公演の方でした。

その最終公演で披歴されたブル8の実演が途方もなく素晴らしかったことは以前ブログに書いた通りですが、今回リリースのブル8は私の聴いた日の前日の演奏ですし、ホールも違っていることもあり、前回のブル9の時のように矢も楯も堪らず速攻でCDを聴きたいとまでは気持ちがたかぶらず、先月末に購入して以来、しばらく聴かないで保留していました。

それで昨日ようやく耳にしたのですが、聴き終えた時点での所感を一言でいうなら、ああ、もっと早く聴いておけば良かった!でした。全く素晴らしいブルックナーです。

「こと完成度においては若干の瑕疵もあり、昨年の9番のような鉄壁の完成度と行かなかったのが惜しいところでしたが、こと表出力においては昨年の9番と優に肩を並べるか、僅かに凌ぐか、というくらいの超弩級のアンサンブル展開が披歴され(特に終楽章は圧巻!)、聴き終えてもう感無量でした」というのが、今年の春サントリーホールで前述の最終公演のブル8の実演を耳にして私がブログに書いた短感でしたが、本CDを聴き終えた時点でも、それと概ね同じ感想を抱きました。

もっとも完全に「同じ」かというと、そこは1日違いとはいえ別演奏、それもホールも違うことから、私の記憶する演奏の印象とは若干ながら異なる感じはします。例えば第1楽章の最初のうちはアンサンブルがまとまり切らず、ばらついた状態で進行しているような雰囲気が、私の記憶するサントリー公演の時よりも一回り著しい印象を聴いていて否めない点などです。もっとも、楽章が進むにつれてアンサンブルがみるみる引き締まっていき、後半2楽章の指揮者の求心力とアンサンブルの一体感が比類無いほどになるあたりは、私の記憶と一致します。

あと聴いていて気になったのが、全体的にホールの残響感が強く、部分的に細部が聴きとりにくいなど、アンサンブルの見晴らしが弱められていて、ミスターSのディテールに拘る稠密な音楽造りの醍醐味が、そのぶん聴きとりにくくなっているように思える点、そして残響過多のためオーケストラの響きが柔らかさの強調され過ぎた形に傾き、耳当たりの厳しさを削ぎがちになっている点などです。

こういったことも含め、私としてはオペラシティではなく翌日のサントリーの方の演奏がライヴリリースされていればベストオブベスツだったというのが偽らざるところですが、そのあたりは私自身がサントリーで聴いた実演時の印象に基づいた脳内補完で録音を聴く限りは、さほど気にならないのも事実ですし、何より演奏自体の素晴らしさが、そういった些細な不満を洗い流しました。全体としてミスターSならではの稠密なブルックナーの世界が十分に開陳され、その広々として雄渾な音景に強く魅せられる、そんな稀有のブルックナーだと思います。

ただ演奏とは関係ない話ながら、総タイム79分13秒なのにCD2枚組でリリースされている点は正直ちょっと疑問です。おそらく販売価格を引き上げるためのメーカーの方策と思われますが、まあ価格は良いとしても、これだとCD入れ替えの手間がかかる以上に、本来なら必要の無いはずのCD入れ替え操作により余計な負担をCDプレーヤーに掛けることになるので、こういう不必要な分割は、ちょっと勘弁していただきたいものです。

最後に「版」についてのトピックスですが、コンサート当日にロビーで配布された公演プログラムに、版に関して「ノヴァーク版第2稿を基本に指揮者自身の解釈を加えた、スクロヴァチェフスキ版」と書かれていた通り、この録音でもノヴァーク版をベースに、ハース版の構造が含まれる形になっています。とくに終楽章の第2テーマ再現部での第566小節のところ(14:49)に、ハース版の楽節が挿入されているのが耳を捉えますが、これはミスターSのザールブリュッケン放送響との録音でも同じように演奏されており、いわばミスターSのブル8のトレードマークのような役割を担っているように思えます。

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