「ジュリーニ・イン・アメリカ」ロスアンジェルス・フィル編


「ジュリーニ・イン・アメリカ」(ロスアンジェルス・フィル編)
 ジュリーニ/ロスアンジェルス・フィル
 グラモフォン 1978~81年 4778840
4778840

独グラモフォンから今月リリースされた、「ジュリーニ・イン・アメリカ」ロスアンジェルス・フィル編と題されたCD6枚組のボックス盤を聴きました。

これは名匠カルロ・マリア・ジュリーニがロスアンジェルス・フィルの音楽監督時代にドイツ・グラモフォンに録音した交響曲と管弦楽曲のCDが集成されたもので、以下の11曲が収録されています。

①ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
②シューマン マンフレッド序曲
③ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」
④ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」
⑤ブラームス 交響曲第1番
⑥ブラームス 交響曲第2番
⑦シューマン 交響曲第3番「ライン」
⑧チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」
⑨ドビュッシー 交響詩「海」
⑩ラヴェル マ・メール・ロア
⑪ラヴェル スペイン狂詩曲

ジュリーニのロスアンジェルス・フィル時代の一連の録音というのは、これまで様々な方面から絶賛されており、その意味では既に評価の確立されている録音ばかりとも言えそうで、また何だって今さら?と思われるかもしれませんが、実は私は以上の録音を⑤を除いて未聴でして、この機とばかりに購入してみたのでした。

それでロマン派作品の方から聴き始めて、⑥~⑪を一通り聴きました。やはり、と言うべきでしょうか、いずれも程度の差こそあれ聴いていて痛切に胸に迫ってくるような演奏となっていて、この時期のジュリーニ&ロス・フィルのコンビの充実度を、今更ながら認識させられました。とくに力強さ一辺倒でない、聴き手を陶酔に誘うような洗練されたソノリティの味わいだとか、カンタービレの魅力など、およそアメリカのオーケストラから、これほどに深い含蓄のある演奏が可能であるということに、聴いていて驚嘆の念を禁じ得ませんでした。

そして一連の演奏を聴きながら、なぜ当時ジュリーニひとりがアメリカのオーケストラから、およそ他と一線を画するとさえも言えるような、ここまでの深みのある表現を成し遂げ得たのか、ということを考えたのですが、おそらくスローテンポ、場合によっては超スローテンポで粘りに粘るというジュリーニの「様式」に依拠する割合というのが高いのではないかと思いました。実際⑥や⑦などで、かなり思い切ったスローテンポが展開されています。

それで試みに、この当時において大胆なスローテンポのスタイルを採るような指揮者をシェフに擁するアメリカのメジャー楽団、というものを考えてみたら、私にはジュリーニ&ロス・フィル以外、どうも思い浮かびません。当時はシカゴ響のショルティ、ボストン響の小澤征爾、ニューヨーク・フィルのメータと、いずれも颯爽とした快速調のスタイルを旨とする指揮者がアメリカのメジャー・オケのシェフに君臨していたはずですし、クリーブランド管のマゼールにしても、彼が後年に示すようになったスロー基調は、この時期には未だ顕著には聴かれなかったはず、、そんな中にあって、このジュリーニの確信犯的なスローテンポ志向は、当時のアメリカの聴衆の耳には、さぞかし斬新に映ったのではないかと想像されます。

しかし余裕あるテンポ運用と言っても、必ずしも細部をほじくり出すといった稠密型の演奏とも一味ちがった、いわば大らかで懐の深い、どっしりとした音楽の印象というものが、ジュリーニの一連の演奏からは聴いていて明瞭に伺えるようにも思われ、そのあたりの表情にも私は聴いていて強く惹き込まれました。

まだ未聴のベートーヴェンの録音の方も、じっくり聴いてみたいと思います。

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