ハーディング/バイエルン放送響によるオルフのカルミナ・ブラーナ


オルフ カルミナ・ブラーナ
 ハーディング/バイエルン放送交響楽団
 グラモフォン 2010年ライヴ 4778778
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独グラモフォンから今月リリースされた、ダニエル・ハーディング指揮バイエルン放送交響楽団の演奏によるオルフのカルミナ・ブラーナのCDを聴きました。

これは今年4月のミュンヘン・ガスタイクでの演奏会のライヴ録音で、合唱はバイエルン放送合唱団とテルツ少年合唱団、独唱陣はソプラノがパトリシア・プティボン、テノールがハンス・ヴェルナー・ブンツ、バリトンがクリスティアン・ゲルハーヘルです。

このカルミナはハーディングとしてはグラモフォンからの第2弾リリースとなるものですが、その第1弾はというと2年前にリリースの、ウィーン・フィルを指揮したマーラー交響曲第10番(クック補筆全曲版)のCDでした。それはマーラー交響曲第10番の5楽章全曲版の、グラモフォンとしての初録音、さらにウィーン・フィルにとっても初録音と、初物尽くしで当時かなり話題になり、好評を博したディスクですが、私には正直いまひとつピンとこない演奏内容でした。

対して今回のカルミナでは、バイエルン放送響という強力オケを指揮してハーディングがどのような演奏を展開するか興味深く思い、購入してみました。

それで聴いてみると、この演奏に対するハーディングのアプローチは全体を通してストレートかつオーソドックスなものであり、すこぶる円滑なオーケストラ・ドライブからアンサンブルをシンフォニックに晴々と鳴らしつつ、弱奏でのキメ細やかなコントロールなどにも十分に目配せを利かせながら、ここぞという時にはバイエルン放送響の類まれなるポテンシャルを効果的に駆使して音楽の高揚力をグッと高めていく、という按配で、テンポ面としても、全25曲中の3曲めの「春の愉しい面ざし」を5分20秒も掛けて(普通だと3分半くらい、遅くても4分半くらい)ゆっくりと進めているあたりが聴いていてオヤッと感じたくらいで、それ以外は概ねオーソドックスで、特に奇を衒ったものではなく、その意味では安心して聴いていられるといった感じの運用でした。

歌手に関してもプティボン、ブンツ、ゲルハーヘル、それぞれの歌唱上の持ち味が比較的よく発揮された歌唱が展開されており、このカルミナの歌詞に特有のコミカルな側面もシニカルな側面も過不足なく表現されていて、聴いていて気持よく惹き付けられました。

この演奏は確かに完成度の高さという点では疑いなく抜群ですし、歌唱陣の出来ばえも素晴らしいと思うのですが、肝心のオーケストラ演奏において、いまひとつ引っ掛かりに乏しい演奏だなという印象を聴いていて払底できなかった感もあり、完成度が高いという以上の特色に乏しいような印象を最後まで拭えませんでした。

ハーディングの指揮者としての才は誰しも認めるところですし、彼の実演の印象としても、例えば昨年の新日本フィルを指揮してのベートーヴェン「エロイカ」などはハーディングの持ち味が良く発揮された、類まれなほどの演奏内容と感じたことを覚えていますが、その意味では、このカルミナではハーディング自らの持ち味が必ずしも生かし切れていないのではないか、という感想を聴き終えて抱いたというのが率直なところです。

これは私の勝手な思い込みなのかもしれませんが、どうもハーディングはマーラーやオルフといった近現代の作曲家の大規模な管弦楽スペックの作品よりも、むしろモーツァルトやベートーヴェンといった古典派の規模の作品の方が、彼の持ち味が発揮されやすいのではないかという風にも思えます。

なお音質に関しては、バイエルン放送局との共同制作とクレジットされている通り、いわゆるグラモフォン的なリマスタリングよりは音響操作が抑制された、ホールで耳にするような作為感の少ないソノリティのバランスとなっていて好感的なものでした。

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