カンブルラン/読売日響の演奏会(7/14 サントリーホール)の感想


読売日響の定期演奏会 
 7月14日(水) サントリーホール

2010-07-14

指揮:シルヴァン・カンブルラン

演目:
 フォーレ 劇音楽「ペレアスとメリザンド」
 メシアン 鳥たちの目覚め
    (ピアノ演奏:児玉桃)
 ドビュッシー ピアノと管弦楽のための幻想曲
    (ピアノ演奏:児玉桃)
 デュティユー  メタボール(5つの変遷)

私がカンブルランに惹かれるキッカケとなった昨年4月の東京芸術劇場でのコンサート以来となる、オール・フランス・プログラムということで期待していました。

オーケストラの配置はステージ向かって左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラと並べたVn-Va対向配置、編成はフォーレが14型、メシアンが8型(正確には第1Vn・第2Vn・Va・Vcすべて8人ずつ)、ドビュッシーが14型、デュティユーが16型でした。なお、もともとフォーレの後にドビュッシーを演奏する予定だったところ、当日はカンブルランの要望でメシアンと入れ替えたとのことでした。

最初のフォーレ「ペレアスとメリザンド」は、私自身この曲が大好きなこともあり、実演で聴けて素直に嬉しかったです。

欲を言うなら、「メリザンドの歌」も付けてくれると尚のこと良かったですが、全体的にストイックで清らかな響きのアンサンブル展開から、フォーレの音楽の美しい部分が虚飾なく描かれた演奏だったと感じます。

余談ながら、フォーレ「ペレアスとメリザンド」の私の愛聴盤をひとつ。

POCG7064
フォーレ 劇音楽「ペレアスとメリザンド」
 小澤征爾/ボストン交響楽団
 グラモフォン 1986年 POCG7064

もう15年も前に購入したCDで、今でも愛聴しています。「メリザンドの歌」(ロレーン・ハントのソプラノ歌唱)も入っていて、その何とも言えない詩情に、何度聴いても惹かれます。

メシアン「鳥たちの目覚め」は児玉桃のピアノ演奏に充実味を感じました。曲の冒頭でのナイチンゲールの鳴き声の場面から、今年のラ・フォル・ジュルネでの憑依的なショパンを彷彿とさせる独特の、辺りを払うような雰囲気が素晴らしく、その雰囲気が音にも乗り移ったかのような、強い表出力を伴うタッチの凛とした佇まいに聴いていて強く惹き込まれるとともに、バックのオーケストラともども、このメシアンの音楽の異界性というのか、情緒的なものから解放された、抽象的な音の世界へと、ホール全体の世界を居ながらにして塗り替えてしまう、そんな演奏でした。

ドビュッシー「ピアノと管弦楽のための幻想曲」は、ピアノ・オケともども、リアルな目線でクールにスコアを再現し切ったような感のある演奏で、その極めて高い完成度は特筆に価すべきだったと思います。しかし贅沢をいえば聴いていて多少の不満もあり、ドビュッシーの「フランス音楽らしさ」というものが、さほど伺われない演奏だったこと、さらに言うなら、何というか、それこそ現代音楽のように硬い響きの演奏に終始し、フランス音楽としての音色の精妙なエレガンシーとか、エスプリの効いた表情付け、ないしハーモニーのフワッとした溶け合いの妙などは、全般に希薄であったようにも感じられた点です。ギリギリのところで音に硬さが抜けないというのか、そのあたりがフォーレならまだしも、ドビュッシーともなると誤魔化しが効かないこともあって、どうしてもそれなりに耳につく、という感じでした。読売日響としても、やはり本当にカンブルランの欲する音を出せるようになるまで、もう暫らく時間が掛かるのかなという気がします。

最後はデュティユーの「メタボール」。当夜の公演パンフの解説によると、デュティユーは90歳を過ぎた現在でも現役で作曲を続けているそうで、「最後の巨匠作曲家」なんて書かれ方をされていました。

私自身ナマで聴いたのは当夜が初めてでしたが、やはり聴いて良かったなと思いました。先週のヴァレーズみたいに、こういう曲だとナマで聴かないと、どうしても音楽の実感が伝わりにくいこともありますし、弱音中心の変遷Ⅱと変遷Ⅳの、ひそやかな音景など、CDで聴いても今一つピンとこないところに、ナマだとゾクゾクっとしたり、変遷Ⅴの最後の猛烈なクライマックスでの、それこそホールを吹き飛ばすかのような迫力なども、実演ならではのものであったと感じました。

余談ながら、この作品をCDで聴く場合、以下のユッカ=ペッカ・サラステ指揮トロント交響楽団のものが優れているように思います。

3984-25324-2
デュティユー メタボール(5つの変遷)
 サラステ/トロント交響楽団
 フィンランディア 1998年 3984-25324-2

フランスとは関係のないメンバーによる録音ですが、それだけに本式の現代音楽としての醍醐味が比較的強く出ていて傾聴させられます。

以上、当夜のコンサートでは一般に実演で取り上げられにくい演目を積極的に取り上げ、概ね水準以上の演奏に仕上げたカンブルランの手腕に感服させられました。この路線を出来れば今後も継続していって欲しいと思います。

コメント

 

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog
Copyright © クラシックCD感想メモ All Rights Reserved.