引き続き、新国立劇場のビゼー「カルメン」の感想


昨日に引き続き、新国立劇場のビゼー「カメルーン」・・・ではなく、「カルメン」(6/13)の感想ですが、今日は演出について、思うところを書きます。

# しかし日本、よく勝ちましたねカメルーンに。

2010-06-14

今回の「カルメン」のプロダクションは、2007年に初演されたものの再演とのことで、その初演は観ていませんが、再演に掛かる以上、それなりに評判の良い演出なのだろうと思って、期待していました。しかし、、

何と言いますか、これは新国立劇場としては近年まれに見るくらいに、オーソドックスな演出のひとつではないか、というのが率直な印象でした。

公演プログラムに、演出を担当した鵜山仁のインタヴューとして、本プロダクションにおける演出のコンセプトについて記載されていましたが、読むと、このオペラに内在する、聖と俗、愛と裏切りとかの相反するエネルギーを表現することを重視した、という趣旨のことが書かれていました。

ただ、それは多分に観念論的な話で、具体的な手法として、そういった切り口が演出に活かされているようには私には思えませんでした。むろん私が気が付かなかったというだけかもしれませんけど、、

少なくとも私が観ていて感じた演出上の美質を挙げるとするなら、それは「演劇的な意味でのリアリズム」でした。例えばカルメンと女工達が取っ組み合いの喧嘩をするシーンで、女工の一人が屋台の食器台を引っ繰り返す、と、ものすごい音がホールに鳴り響くんですが、これなどオペラというよりは演劇の舞台のワンシーンのような強烈な印象を感じましたし、歌手の立ち回りにも総じて芝居役者の振る舞いのようなリアルさが出ていたと思うのです。

鵜山仁は新国立劇場の演劇部門の芸術監督なのだそうで、そのあたりの演劇的な感覚が、おそらくオペラに巧く取り入れられていたように感じられました。

しかし、この演出で大きく不満だったのは、この演出ならではという「ひねり」のある視点が伺われなかった、という点に尽きます。

この意味で、この舞台演出は観ていて、何だか7年前に私が観た「カルメン」の舞台に似てるなと思いました。

それは2003年の東京文化会館における二期会の公演です。

2010-06-15

この時の「カルメン」は二期会の創立50周年記念公演で、飯森範親の指揮、東京フィルの演奏、外題役が板波利加、そして演出を担当したのが、「ウルトラマン」シリーズで知られる実相寺昭雄でした。

が、その演出に関しては観ていて正直ものたりない気がしたのを覚えています。ステージの進行に伴い回転していく舞台装置のアイディアなどに、実相寺昭雄の特撮方面での経験が活かされているのかなと思う程度で、全体にはオーソドックスを地で行く演出という感じでしたし、群衆の乱闘シーンが観ていてリアルに思えた点が、今でも何となく印象に残っている程度です。

といって別にウルトラ怪獣を出せというのではありませんが、少なくとも、このオペラにおける既成観念を揺さぶるほどの力のある演出とまではいかなかった、というのが率直な感想でした。

そして、今回の鵜山仁の手による「カルメン」の演出も、やはり7年前に観た実相寺演出の「カルメン」と同じ意味での物足りなさを感じたのです。

先日も書きましたが、要するに「カルメン」というのは、筋としての強烈なメッセージ性には欠けるオペラではないかという前提が、私にはあるので、いかに舞台をリアルに描き切ろうとも、もともとカルメンというオペラが本来的に内在するドラマツルギーだけでは限界がある、ように思えるため、それに加算されるプラスアルファ的な視点がないと、演出としての機能に物足りなさを覚えてしまうのです。この意味において悪い演出ではないにしても良い演出とは言えないのではないか、というのが私なりの忌憚ない所感になります。

この点、「カルメン」のシナリオでいうと終盤あたり、例えば「ヴォツエック」に似た雰囲気を漂わせる点とか、そのあたりを演出的に強調しても面白そうな気がしますし、そうでなくても、既存の有り来たりの視点からの、何らかの逸脱を提示して、価値観に揺さぶりを掛けて欲しかったというのが正直なところでした。

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