引き続き、フィルハーモニア管弦楽団の来日公演の感想


昨日に引き続き、サロネン/フィルハーモニア管弦楽団の来日公演(サントリーホール 6/2)の感想です。

2010-06-03

休憩を挟んで、16型の編成でシベリウスの交響曲第2番が演奏されました。

このシベリウスにおいては、サロネン一流の瑞々しい音響の色彩感が、卓抜した合奏能力を誇る名門フィルハーモニア管のアンサンブルから、こよなく冴えざえと紡ぎ出されていく様が素晴らしく、それはある意味で期待通りとも言えるものでしたが、やはり客席で聴いていて、改めて驚嘆させられてしまうものでした。

全体を通してアンサンブルの、合奏上の透明感が驚異的に高く、弦の音彩は清らかというか清潔というか、余分な贅肉のない、すっきりとしたものでしたが、それは風通しが良いとか、見晴らしが良いとか言うに留まらない、音楽の持つ知的な側面を聴き手に意識させるに足る、考え抜かれた遠近法のバランスと感じられました。フォルテッシモにおいてさえそうで、渾身の最強奏において最弱奏の静謐を聴き手にイメージさせることのできる、希有の演奏、というべきでしょうか。アンサンブルの色彩面での途方もないニュアンスの豊かさも絶品であり、瞬間瞬間の響きの、多様な推移が、何と雄弁であったことか。その個々の音色に対する研ぎ澄まされた才覚は、おそらくサロネンのハーモニーというものに対する鋭敏なセンスの賜物なのでしょう。

あるいは、そこにはサロネン自身の持つ確固たる演奏スタイルというかアイデンティティに、同郷の作曲家シベリウスに対する何らかのシンパシーが加算されたのかもしれませんが、いずれにしても当夜のシベリウスは、情緒の力に頼らず、純音楽的な処理に徹する行き方に依拠した演奏としては、驚異的な表出力を漲らせていた演奏と思われ、聴き終えて感服の極みでした。

フィルハーモニア管は周知のように、オーケストラとしては世界でも珍しい、「レコーディングのためのオーケストラ」という出自を持ちますが、それだけにベルリン・フィルを凌ぐとすら言われる、アンサンブルの指揮者に対するレスポンス感度、すなわち指揮者の解釈に対しての適応力の高さが尋常一様でなく、おそらくサロネンの望んだであろうデリケートな色彩表情が、抜群の感度で音響化されていく様は聴いていて圧巻で、この名門オーケストラのアンサンブル能力の高みが、そのあたりに端的に伺えるような気が聴いていてしました。

余談ですが、当夜の公演プログラムを見たら、「ロンドンのオーケストラ界は目下サロネン&フィルハーモニア管、ゲルギエフ&ロンドン響、そして若き精鋭ユロフスキ率いるロンドン・フィルの三者の激戦区となっている」と書かれていて、すごい贅沢な状態だな現在のロンドンは、、と思ってしまいましたし、これらの世界的にも傑出した三者が、本気で互いに凌ぎを削った日には、一体どれだけ演奏水準が上がるものだろうか、という漠然とした興味もそそられました。

以上、当夜のフィルハーモニア管弦楽団の来日公演は、聴き手(日本人)に対して何か抜き差しならない問題提起を突き付けたかのようなサロネンのへリックス自作自演に始まり、ヒラリーハーンの珠玉の名演を経由し、そしてサロネン会心ともいうべき素晴らしいシベリウスで結ばれた、私にとって聴きごたえ120%とも言うべき、充実を極めたコンサートでした。

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