チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルによるブルックナー交響曲第8番の1994年リスボンライヴ


ブルックナー 交響曲第8番
 チェリビダッケ/ミュンヘン・フィル
 AUDITOR 1994年ライヴ AUD7001/2
AUD7001

アルトゥスから先日リリースされた、セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるブルックナー交響曲第8番の来日ライヴにつき、その感想を昨日ブログに書きましたが、それを聴いたら、何だかチェリビダッケ/ミュンヘン・フィルのリスボンライヴのブル8を聴きたくなってしまって、それを今日、久々に聴きました。

これはチェリビダッケとミュンヘン・フィルが1994年にリスボンに楽旅した際のコンサートのライヴで、正規盤ではありませんが、その演奏内容の凄さゆえに、あまりにも有名な録音となっています。非正規盤にして、これほど有名な録音というのも珍しいのではないでしょうか。

その演奏内容は、既に様々なところで語られているとおり、もはや人間業を超えたようなブルックナーです。とにかく音響の濃度が恐ろしいほどの水準にあり、それがあまりに強烈すぎるものですから、聴いていて頭の中の何かが麻痺してくるような気さえするほどです。ですので、軽々しく聴くのに躊躇を余儀なくされますが、いざ聴くとなると、それこそ世界がひっくり返るかというくらいの感銘を味わうことになるのです。

とはいえ、そのあたりは何を今さらという感想に過ぎませんし、それよりも、ここでは昨日の来日ライヴの方のブル8との相違について、少し書いてみたく思います。

その前に、チェリビダッケ/ミュンヘン・フィルのブル8には、もうひとつEMIからリリースされた正規盤もありますので、それについても触れます。

TOCE-9902-3
ブルックナー 交響曲第8番
 チェリビダッケ/ミュンヘン・フィル
 EMIクラシックス 1993年ライヴ TOCE9902-3

このEMI盤のブル8に対する私の感想はこちらに掲載していますが、後半の2つの楽章の素晴らしさに対し、前半の2つの楽章での表出力が、チェリビダッケのブルックナーとしては少し弱いかなという印象を持っています。

このEMI盤のブル8は、3種類のチェリビダッケ/ミュンヘン・フィルのブル8の録音の中でも、テンポの遅さが異様に際立っているのが大きな特徴です。特に21分に及ぶ第1楽章、35分に至る第3楽章、32分を超える終楽章と、いずれも来日ライヴとリスボンライヴを一回り凌駕していて、結果的にブル8の史上最長盤という位置づけとなっているのです。

また、比較的デッドなことで知られるミュンヘン・ガスタイクのホールでのライヴ録りであることから、残響感が抑制された録られ方になっていることも、来日ライヴやリスボンライヴと一線を画した感じになっています。というのも、来日ライヴとリスボンライヴの音質が、ともにホールの豊潤な残響感を、素直に取り込んだ形になっているからです。

特にリスボンライヴの方は、とにかくホールの残響の高さが際立っていて、ものすごい響きの膨らみとなって反響しているのです。その意味では、EMI盤とは正反対の音質とも言えそうです。

そして、今回リリースされた来日ライヴですが、EMIのガスタイクでのライヴとリスボンライヴとの、ちょうど中間的な残響感で、要するに過不足の無い、ちょうどいい按配の膨らみ加減ではないかと思われるものです。

もちろん、そのような残響特性だけをもって、3種類のチェリビダッケ/ミュンヘン・フィルのブル8の録音の中で、来日ライヴが最も優れている、などというつもりはありませんが、こと音質に関しては、来日ライヴが最も理想的なのではないか、という気もします。何より音響の豊潤さと細部の克明ぶりとの釣り合いが巧くとれている感じがします。

とはいえ、3種それぞれ残響感の違いという点に起因して、それに伴い音楽から受ける含蓄の印象もまた、ずいぶん違う感じがします。

以上、少し分析的な書き方になってしまいましたが、要するにチェリビダッケ/ミュンヘン・フィルのブル8を収録した、これら3種類の録音には、それぞれに独特の持ち味というのがあって、それはホールの残響特性という客観的要因に、かなり左右されているのではないかと思われたのでした。

逆に言うなら、これだけホールの残響特性が開いているのに、同じ曲を指揮して、ほぼ同等の感銘を聴き手にもたらし得るというのは、おそらくホールの残響に最も適合した音楽造りを生涯にわたって心掛けたと言われる、チェリビダッケ一流の演奏哲学の賜物ではないか、という気もするのです。

生前は極度にレコーディングを嫌ったチェリビダッケですが、結局のところレコーディング技術が一連のライヴの実像を、こうして的確に捕捉する限りにおいて、彼の往年の音楽造りの至芸の一端なりを後世に伝えるのならば、その意義までも彼は、やはり否定してかかるのでしょうか、、、このリスボンライヴの演奏を聴きながら、そんな素朴な疑問が、ぼんやりと頭に浮かんだりしました。

コメント

 
hkawaharaさん、初めまして。
ヒロチェリと申します。
私はチェリビダッケの
ブルックナー交響曲第8番の演奏では、
リスボン盤が最も優れているように思いました。
(音響面、演奏の集中度等で)
私のブログに音源をまとめています。
ご参照頂ければ幸いです。

http://hiroceli.blog137.fc2.com/blog-entry-104.html

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