「コレリ大尉のマンドリン」~ルイ・ド・ベニエールの小説からの音楽


「コレリ大尉のマンドリン」
-ルイ・ド・ベニエールの小説からの音楽 ―
 オグデン(ギター)、スティーヴンス(マンドリン)
 1999年録音
ANNI-30

「あまり知られていないけど、偉大な作曲家の多くがマンドリン用の曲を書いています。ヴィヴァルディやフンメルだけじゃない、ベートーヴェンだって書いているんだから。」
「ベートーヴェンもねえ。」
 ペラギアはくり返した。神秘と畏怖と神話に包まれたその名が、人間が達成できる限界を意味することまではわかっても、それ以上の意味はない名前だった。ベートーヴェンと言われても、彼の音一つ聞いたことがなかったからだ。全能の天才の名という認識があるだけだった。・・・

          小説「コレリ大尉のマンドリン」より

「シャンドス30周年BOX」につき、これまで収録盤の感想記を順に29枚まで掲載してきましたが、今回は最後の一枚となるCD30について書きます。

収録曲は、以下のとおりです。
①ヴィヴァルディ:協奏曲ハ長調RV.425
②フンメル:マンドリン協奏曲ト長調よりアンダンテ
③ジュリアーニ:大ソナタOp.85
④ペルシチーニ:ポルチャ・バリアータ
⑤カラーチェ:愛はゆりかごOp.133
⑥パルンボ:小ボレロ
⑦サグレラス:はちどり
⑧ヴィラ=ロボス:ショーロ第1番、前奏曲第1番
⑨ラウロ:4つのベネズエラ風ワルツ
⑩バリオス:悲しみのショーロ、蜂
⑫リョベート:聖母の御子、アメリアの遺言、先生
⑬作曲者不詳:私の悲しみ
⑭ロメロ:アンダルシア組曲よりソレアレス
⑮トゥリーナ:タレルガ讃Op.69よりソレアレス

以上の作品がそれぞれクレイグ・オグデンのギター演奏、またはアリソン・スティーヴンスのマンドリン演奏により収録されています。

このアルバムのコンセプトはイギリスの小説家ルイ・ド・ベニエールの手による4つの小説(「コレリ大尉のマンドリン」および南米3部作)に関連する、マンドリンおよびギター音楽をピックアップし、一枚のディスクにまとめた、というものです。

その「コレリ大尉のマンドリン」という小説は、ルイ・ド・ベニエールの(南米3部作に続く)4作目の長編小説なのですが、これが1994年にイギリスで発表されるや社会現象と言われるまでの大ヒットとなり、現在まで世界26か国まで翻訳されているという驚異的なベストセラー小説です。

つまり本ディスクは、同小説のいわばサウンドトラック的な位置づけにあるもので、まずその小説を読んでから聴いた方がいいのではと思い、それをアマゾンで取り寄せて読了しました。

このCDは、それ自体としてはロマンティックで甘くて感傷的なムードの演奏が、たゆまなく延々と流れていく、という風で、それはいいとしても、やはりメリハリ不足というのか、同じような風景が連続する鈍行列車の車窓を眺めているような感じであり、もし何の思い入れもなく聴いていたなら、おそらくは途中でウンザリしただろうなと思います。

ですので、私が当該小説を読まずに、このCDを聴いていたとしたら、おそらく特に強い感慨も湧かなかったのだろうと思うのですが、その小説を読んだ今の耳でCDの演奏に耳を傾けると、小説の雰囲気のようなものが頭の中に巻き戻されてきて、それにより何とも言えない気分になるのです。

例えば、④のペルシチーニ「ポルチャ・バリアータ」を聴くと、小説中の以下のようなシーンが回想されます。

・・・「そうだ、ポルカを弾いてあげる。ペルシチーニの曲です。」
 彼はマンドリンをかかえなおし、音符を二つ弾いた。・・・二つの音符をリタルダンドでゆっくりと弾き、さらに八分音符の和音を四つ奏でると、いきなり休符と一六分音符二つを使った一小節をまじえて聞き手をまごつかせ、そのまま単音と和音が入り乱れた一六分音符の高速パッセージに突入したので、ペラギアは度肝を抜かれた。これほど巧みな演奏を聴いたこともなかったし、これほど驚異に満ちた曲目があることも知らなかった。小節のあたまにとつぜん華やかなトレモロが入るかと思うと、テンポは変わらないのに音楽がためらい、速度は変わらないのに半分に減速したり二倍の速さに聞こえた。中でも最高だったのは、音のピッチがあまりにも高いので、勢いよく音階を下っても音が落ちるような感じはなく、響きのいいバスの音に落ちたと見る間に低音部と高音部が甘く交互に響くのだった。踊りだすか、ふざけて遊びたくなるような音だった。・・・大尉は最初の部分をもう一度くり返し、最後をスプレッド・コードで締めくくったので、いきなりおとずれた静寂に、ペラギアは何かを奪われたような気がした。・・・

          小説「コレリ大尉のマンドリン」より

そういうわけで本CDは、おそらくルイ・ド・ベニエールの小説を読んだ者が、その余韻を噛み締めるために製作されたアルバムなのでしょう。

以上をもって「シャンドス30」ボックスセット全30枚の感想記は終了です。これについては後日、私なりの総括のようなものを出します。

なお、小説「コレリ大尉のマンドリン」の感想についても後日に出します。

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