シモーネ/トリノ放送響によるドニゼッティの歌劇「愛の妙薬」全曲


ドニゼッティ 歌劇「愛の妙薬」全曲
 シモーネ/トリノ放送交響楽団
 フィリップス 1984年 PHCP-1386/7
PHCP-13867

今月、新国立劇場で上演されるドニゼッティのオペラ「愛の妙薬」を観に行く予定です。その予習として今日はCDの全曲盤を一通り聴きました。

これはクラウディオ・シモーネ指揮、トリノ放送交響楽団の演奏による「愛の妙薬」全曲盤で、キャストはアディーナがリッチャレッリ、ネモリーノがカレーラス、ベルコーレがヌッチという強力な陣容です。

「愛の妙薬」はドニゼッティの代表作として名高いオペラですが、対訳を見ながら聴いていて改めて思ったのは、これってやっぱり特殊なシナリオのオペラではないか、ということなのでした。

一見たわいもない、定型的なシナリオに見えなくもないものですが、実はオペラとしては、かなり珍しい部類に属するシナリオではないかと思うのです。

要するにオペラ・ブッファなのに泣かせようとするのですね。人情に訴えて観客をホロっとさせようとする。このあたり、日本で言うところの人情ものに近い性格がありはしないかと私には思えるのです。

夏目漱石の小説に「虞美人草」というのがありますが、このオペラって、あれに似ているような気がします。似ていると言っても、筋立てとか人物設定などは全然ちがいますが、雰囲気が何となく似ている。とくにハッピーエンドの直前あたりで読み手を大きく泣かせようと誘導するあたりがソックリというか、、

漱石の「虞美人草」は、ストーリーとしては完全に人情ものですが、西洋のオペラで、この「人情もの」というカテゴリーに属するシナリオを有するオペラって、ほとんど無いのですね。少なくとも私は、このドニゼッティの「愛の妙薬」以外では、ちょっと思い浮かばないですし、、

確かに人情ものというのは江戸時代に端を発する日本文芸に特有のジャンルですので、それが西洋のオペラに見られないのは当然とも言えそうですが、しかし、そう考えるとドニゼッティの「愛の妙薬」は、かなり突然変異的なオペラかも知れないという気もしてくるのです。

もちろん、このオペラが音楽的に素晴らしいのは今さら言うまでもないですし、だからこそオペラ・セリアの名作「ルチア」と並ぶ、ドニゼッティの最高傑作としての評価を今日まで享受し続けていると思うのですが、このオペラの醍醐味には、音楽の良さというのに、シナリオの特殊性という要因も一枚噛んでいるような気がします。

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