仲道郁代のオール・ショパン・アルバム「ショパニズム」


「ショパニズム~オール・ショパン・アルバム」
 仲道郁代(pf)
 RCA 2009年 SICC1326
SICC-1326

今月RCAよりリリースされた、仲道郁代のオール・ショパン・アルバム「ショパニズム」を聴きました。

収録曲は以下の12曲です。いずれも2009年9月、笠懸野文化ホールでのセッション録音とされます。

①ワルツ第2番「華麗なる円舞曲」作品34-1
②バラード第3番作品47
③バラード第1番作品23
④練習曲第1番作品10-1
⑤練習曲第5番作品10-5
⑥練習曲第9番作品10-9
⑦練習曲第13番「エオリアンハープ」作品25-1
⑧練習曲第12番「革命」作品10-12
⑨練習曲第3番「別れの曲」作品10-3
⑩幻想ポロネーズ作品61
⑪マズルカ第13番作品17-4
⑫ワルツ第9番「告別」作品69-1

仲道郁代のレパートリーの中核は、もともとショパンとシューマンだったと記憶しています。しかしショパンに関しては暫く録音から遠ざかっていたようで、このアルバムも、彼女のショパン録音としてはピアノ・ソナタ第3番とスケルツォ全曲を収録した、以下の1993年の録音から、16年ぶりとなっています。

BVCC642
ショパン ピアノ・ソナタ第3番、スケルツォ全曲
 仲道郁代(pf)
 RCA 1993年 BVCC642

ちなみに上記CDを聴いての感想(メモ書き)はこちらに掲載しています

仲道郁代のショパンと言えば、私は先月サントリーホールでピアノ協奏曲第1番の実演を聴いたのですが(ズデニェク・マーカル指揮プラハ交響楽団の伴奏)、そこでは実に美しいショパンが披歴され、その演奏の印象として「単に和音が奇麗だとか、フレージングが滑らかだとかいう話とも違って、いわば音楽それ自体としての美しさというのか、ショパン演奏の一つの様式美とでもいうべきものが、おそらく彼女の中で完全に確立されていて、それが全体として聴き手に訴えかけて、その心を揺さぶらせずに置かない、そんな演奏」という風にブログに書きました。

おそらく本CDはショパン生誕200年の記念イヤーである今年を睨んだ、満を持してのショパン・アルバムという感じがしますが、いずれにしてもピアニストとして円熟の境地にある彼女が、どのようなショパンを披露するか、その演奏に耳を傾けてみました。

そして全体を聴き終えて、彼女のピアニズムが如何にショパンの音楽に「馴染んでいる」か、その度合いの強さが並々ならない点に、私は何より驚かされました。

これは先月のコンサートの実演からも感じたのですが、一体に仲道郁代のピアノ・ソロには、弱音での夢のように柔らかいタッチから、強音での凛々しいフレーズの躍動に至るまで、すべてのフレージングがショパンの音楽に吸着するかのような、揺るぎない様式感と多彩なニュアンスの反映が随所に聴かれるのです。

そして、そのピアニズムというのは、盤石のテクニックにより幾つかの難所を魅力的に引き立たせる華を感じさせる演奏であったりもするのですが、むしろ彼女の幅広い表現力からは、どの曲ひとつとっても、聴いていて歪みの無い作品本来の美しさというものが、仮借なく描き出されている点に真価があるように思われるのです。言わば、その場面ごとのニュアンスの移ろいを楽しみながらショパンの音楽を表現しているというような、ピアニズムと作品との馴染み具合が絶妙な演奏、というべきでしょうか。

もっとも彼女のピアニズムの性格としては、おおらかで、健康的なものであり、ショパン音楽の病性を際立たせるような病的で不健康な表情付けなどは、ここには皆無といってよいほど聴かれません。

しかし、それでも彼女の演奏に耳を傾けていると、ある種の「孤独の痛み」というのか、最晩年のショパンの苦悩のような疼きが、確かに息づいているように私には思われるのです。

特に素晴らしいのが⑩の幻想ポロネーズで、この演奏には実に美しく、同時に哀しい響きが充溢しているのです。

この幻想ポロネーズについては、仲道郁代が久しぶりのショパン録音にあたって、これこそはと特に収録を熱望した作品とされており、本CDのライナーノートには、作品に対する自身の思いが以下のように開陳されています。

この曲ではショパンが人生の最後に到達した境地が形になっていると思います。ポーランドに対する彼の思いをシンボリックに封じ込めたポロネーズという形式の中に、繊細で、雄々しく、しかも深い芸術の極みがあふれんばかりにきわめいている。ショパン芸術の頂点に立つ至高の作品。ショパンのピアニズム、言うなれば〈ショパニズム〉をきわめた作品ともいえるでしょう。・・・フォームの調性感覚も、崩れてはいないけれど、進む先はワーグナー的なところまでいくのではないか、と感じさせる作品です。ショパンのあらゆる要素がここにあります。

この幻想ポロネーズの演奏には、確かに最晩年のショパンの音楽に去来する痛みと慰めとが、ぎっしりと詰め込まれており、それは聴いていて強く心を打たれ、揺さぶられるほどに感動的なものでした。

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