クセナキスのテープ音楽「ペルセポリス」(仏フラクタル盤)


クセナキス 「ペルセポリス」
 フラクタル 2000年録音 FractalOX
FractalOX

ゼウスは世界の臍(へそ)の位置を正確に決定しようと思いたち、世界の果てと果てから2羽の鷲を同時に放ち、2羽の鷲が飛行中どこで交差するかを調査した。交差した地点はデルポイだったので、ギリシアが東西および南北の接するところとなり、以来、互いに独自の文明がここで逢引し、欲に駆られて遍歴する世界中の軍隊がここで鉢合せをすることになった。
            「コレリ大尉のマンドリン」より

現代イギリスの小説家ルイ・ド・ベニエールの長編小説「コレリ大尉のマンドリン」を本日ようやく読了しました。

いきなり何の話だと思われるかと存じますが、これは実は私が先の年末年始に読んでいた、3冊の単行本のうちの一冊です。それについては、このブログの今年最初の更新で「もう一冊はイギリスの長編小説なのですが、まだ半分くらいしか読めていません」と書いたのですが、それがこの小説になります。

私は現在ブログ上で「シャンドス30周年ボックス」の収録盤すべての感想記を掲載するという、マラソンみたいな企画を継続中なのですが、その最後の30枚目のCDというのが、この小説のサウンドトラック的な内容となっていたのです。

そのCDの感想を書いて企画を満了させるためには、この小説を読まなければならない、ということもないのですが、なにしろ当ブログで1年近く掛けて地道に進めてきた企画でもあり、そのゴールをキチンと飾る意味でも、出来れば読んだ方が良いと思い、アマゾンで注文して取り寄せ、それで昨年末あたりから読み始めたのでした。

この小説について簡単に説明しますと、もともと1994年にイギリスで刊行されたものですが、その後イギリスで社会現象と言われるまでの大ヒットとなり、現在まで世界26か国まで翻訳されている、世界的なベストセラー小説です。

その大まかなストーリーは、ギリシアのケファロニア島という、イオニア海に面する小島を舞台として、1940年初頭から1990年代までの、約50年に渡って繰り広げられる、壮大な人間ドラマです。

そのドラマの中心軸として設定されているのは、イタリア軍の大尉としてギリシア占領の役務に服するためケファロニア島に来たアントニオ・コレリ大尉と、その島で育った娘キリア・ペラギアとのロマンスなのですが、この二人を取り巻く島の住民たちが、20世紀中葉において立て続けにギリシアを襲った「4つの災厄」(①イタリアによるギリシアへの軍事進攻と占領、②それに続くナチス・ドイツのギリシア制圧、③第2次大戦後に台頭する共産勢力が引き起こしたギリシア内戦、④1953年のギリシア大地震)になすすべなく翻弄されていくという、その過酷な運命の流れが小説全体のバックボーンとして大河的に描き込まれているのです。

この小説の感想については、いずれ改めて書こうと思っていますが、今日は、この小説を私が読みながら聴いていたCDについて書こうと思います。

それがヤニス・クセナキスのテープ音楽「ペルセポリス」で、これはフランスのフラクタル・レーベルから2000年にリリースされたCDです。

ギリシアが舞台の小説ですので、ギリシアの作曲家クセナキスの音楽が私の頭にまず浮かんだのですが、それ以上に、この「ペルセポリス」の持つ独特の音響的雰囲気というのが、この小説の特定のシーンに対し、絶妙にマッチするように思えたから、というのが最大の理由です。

そのストーリーに関する具体的な話は、また後日この小説の感想をブログに出す時にでも触れるつもりですが、この小説は基本的に文学のジャンルに属しているため、文学の本分ともいうべき、ある種の極限状態における人間性の赤裸々な描写なども、それなりに多く含まれています。特にナチス・ドイツによるギリシア人の迫害、あるいはギリシア内戦による同胞同士の血なまぐさい粛清などに、かなり凄惨な描写があります。

そして、そのあたりの情け容赦のないリアルな文調と、このクセナキスの「ペルセポリス」に聴かれる、あたかも大自然の暴風雨に身を晒すような壮絶な感覚とは、不思議に調和するようなところがあるのです。

実はクセナキスの経歴を調べてみて分かったのですが、彼は第2次大戦において、ギリシャ国内で反ナチス・ドイツのレジスタンス運動に参加していて、そのあたりが偶然にも小説の設定の一部と重なっているのです(実際この小説にもマンドラスという反ナチス・ドイツのレジスタンス兵士が登場しています)。

そういうわけで私には、このクセナキスの「ペルセポリス」における音楽に特有する趣きというものが、(それが果たしてギリシア的なものの、深い部分での符合なのか否かは別としても)あたかも小説の重要な要素の一部でもあるかのように、しごく鮮やかに感じられたのでした。

FractalOX-2

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