ヴァント/ベルリン・ドイツ響によるブラームスの交響曲第1番


ブラームス 交響曲第1番・第4番
&シューマン 交響曲第4番
 ヴァント/ベルリン・ドイツ交響楽団
 Profil 1994年~96年ライヴ PH09058
PH09058

ギュンター・ヴァント指揮ベルリン・ドイツ交響楽団のライヴ集成ボックスセットにつき、今日はブラームスとシューマンの交響曲を収録したCDを聴きました。

これで、先週末に購入した本ボックスセットのCD8枚すべて、ようやく一通り耳を通しました。

とはいえ、感想については本ボックスセットの他盤の方において、私としては既に書き尽くしているつもりですので、特に新たな感想というのも無いのですが、このブラームスもシューマンも、やはり素晴らしい演奏でした。

それで終わっても何ですので、以下、ヴァント指揮のブラームス交響曲第1番の幾つかのCDにおける、各演奏の雰囲気の違いについて、軽く書いてみようと思います。

ヴァントが晩年(80年代後半以降)に録音したブラームスの1番のCDには、今回のベルリン・ドイツ響の演奏を含め、以下の4種類がリリースされています。

①シカゴ交響楽団とのライヴ(1989年)
②北ドイツ放送交響楽団とのライヴ(1996年)
③ベルリン・ドイツ交響楽団とのライヴ(1996年)
④ミュンヘン・フィルとのライヴ(1997年)

以上のうち①は、ヴァントが唯一アメリカのオーケストラに客演した際のコンサートのライヴで、演目はシューベルトの「未完成」とブラームスの1番というものでした。

当時ヴァントはアメリカのオケとしてはシカゴ響のほか、ボストン響やクリーヴランド管といったビッグネームからオファーを受けていたのですが、ヴァントの要求する膨大なリハーサル時間の要求に応じられず、いずれも実現化しなかったこと、このシカゴ響の客演にしても、世界屈指のオーケストラに対する「ウルトラスタンダードな」演目のリハーサルとしては、通常の2倍という異例の時間をオケ側に呑ませた上で、漸く実現したものであったこと、などがライナーノートに書かれています。

とはいえ、このシカゴ響とのブラ1は、音響的にアンサンブルのバスが大人しくて腰が軽い感じがしますし、ここぞという時のアンサンブルの質感の集約もいまひとつ弱いですし、ティンパニもずいぶん大人しいですし、要するにヴァントのブラームスとしてみると、いまひとつ表出力が弱いなというのが率直な印象です。

②~④の3つの演奏については、いずれも素晴らしいのですが、それらの雰囲気の違いとしては、同じように3つのオケによるヴァントの録音の残されている、ベートーヴェンの交響曲第1番に関して、先週末にブログで書いたことと、概ね重なるように思います。

つまり、豪快さより緻密さを志向したような稠密なまでの北ドイツ放送響とのライヴ、逆に緻密さよりも豪快さを志向したようなミュンヘン・フィルとのライヴ、そして豪快で緻密な様相を兼ね備えたベルリン・ドイツ響とのライヴ、という図式です。

そういうわけで、もし仮に私が、これら①~④の中から一つだけベストと思える演奏を選ぶと言うなら、おそらく③を選んでしまうと思うのですが、ただ聴き手によっては、おしなべてテンションの高いベルリン・ドイツ響との演奏よりは、緊縮的で引き締った構えからヴァント盤石の造形美を聴かせる北ドイツ放送交響楽団との演奏や、ヴァントにしては開放的で大らかなアンサンブル展開に独特の魅力のあるミュンヘン・フィルとの演奏に軍配が上がるという意見もあるのかも知れません。

そして、ほぼ同じ時期の録音に係る②~④において、何故これほどの雰囲気の違いが出るのか、という点に関して、私はベートーヴェンの交響曲第1番に関しては音質的な要因ではないかと書いたのですが、あれから、また少し考えてみました。

つまり純粋に、各オーケストラに対する指揮者の立ち位置の違いという点に要因を求めるとするなら、まず②は紛れもない手兵オケに対する指揮、③はヴァント第2の手兵ともいうべきオケに対する指揮、④は純粋な客演指揮となるのですが、手兵オケの場合、その求心力ゆえに音楽の雰囲気としても緊縮的で引き締ったものになり、逆に客演指揮だとオケ本来の色合いというもの遠心力として働き、そのぶん開放的な雰囲気が付帯されるところ、それが「第2の手兵」オケともなると、そのへんの求心力と遠心力とが、絶妙なバランスで作用し、結果あのように、ヴァントとしても希有なほどの高い訴求力を獲得するに至ったのではないか、という気もするのです。もちろん私の勝手な想像であり、まったく見当外れかも知れません。

それにしても本ボックスセットは、まさにヴァント珠玉の名演が満載という感じで、先週から連日それらを耳にしたことは、私には何とも言えない喜びの連続でした。

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