引き続き、スヴェトラーノフ/ロシア国立響によるマーラー交響曲全集


マーラー 交響曲全集
 スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団
 ワーナー 1990年~96年 2564688862
2564688862-2

昨日の続きですが、エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮ロシア国立交響楽団のマーラー交響曲全集につき、以下、各交響曲ごとに演奏の感想を簡単に書きます。

交響曲第1番「巨人」:
スヴェトラーノフにしては抑制を効かせた、万事に抜かりない演奏内容ですが、終楽章など、さすがに決めるところは確実に決めてきます。第3楽章のテンポが異常なほどスローで、(9:30)からのトランペットの凄いヴィブラートを始め、その感情濃度の高さに聴いていて戸惑うくらいでした。

交響曲第2番「復活」:
まずテンポが異常ですね。第1楽章で24分と、際立ってスローペースです。しかし大問題なのが演奏としての完成度の低さで、いきなり第1楽章冒頭のフェルマータ後のチェロとコンバスのユニゾンからしてズレていますし、以降も聴いていて縦の線がグラグラしたり、管楽器があちこちで音を外したり。どうもリハーサル不足の演奏かと思えるのですが、、、加えてトッティが軽くて、全体的に量感不足な点も気になりました。

交響曲第3番:
全体に丁寧で緻密なアンサンブルの組上げが印象的で、第2番と打って変わって完成度の高い演奏です。スヴェトラーノフにしては抑制を効かせたスタイルから、洗練されたロシアン・スタイルとでもいうべき、独特の美質が方々に披歴されていて聴いていて惹き込まれました。特に終楽章が途方もなく美しい!

交響曲第4番:
第2番と同年の録音なのですが、こちらは完成度が高く、アンサンブルが良く練られている感じがします。スローテンポが特徴的で、第1楽章は19分近い時間が掛けられ、その展開部の入り(5:52)あたり、初めて聴くようなユニークな音景に耳を奪われました。第3楽章終盤のクライマックスではトランペットの絶叫とティンパニの豪打が尋常でなく、もの凄い迫力です。終楽章はオリガ・アレクサンドリアが美声を披露しています。

交響曲第5番:
肝心なところで迫力不足な演奏内容、というのが率直な感想です。特に弦パートのバランスがアンサンブルの中で全般的に引っ込んで聴こえてくるのが致命的というのか、表出力の振るわない最大の要因のように思えました。

交響曲第6番「悲劇的」:
これはスヴェトラーノフの代表的な演奏のひとつで、しばしば「爆演」とも言われる演奏です。しかし少なくとも第1楽章の途中までは慎重で、むしろスヴェトラーノフとしては大人しいとさえ思えるのですが、しかし演奏が進むにつれて、次第にアンサンブルに気合いが入った演奏展開となり、第1楽章コーダともなるとアンサンブルが乱れるのもお構いなしの驀進的なテンポで、怒涛のような流れとなります。第2楽章冒頭のリズムのつんのめり具合も独特ですし、終楽章の暴風雨も凄まじい限り。演奏の全体的な仕上がりは、全集中だと「復活」に次ぐ粗雑さですが、この「悲劇的」はアンサンブルの鬼気迫るまでの燃焼力が素晴らしく、こと表出力という点では全集中随一の水準と言えると思います。ちなみにタイムは全体で80分を切っていますので、CD1枚収録でもいいと思われるのに何故かCD2枚に分かれていますね。

交響曲第7番「夜の歌」:
第6番「悲劇的」と並んで、いわゆるスヴェトラーノフ節の充溢する個性的演奏で、金管楽器の強い色彩感が炸裂する、ロシアン・バランスが強烈な演奏です。緩急の対比が強く、遅いところはトコトン遅く、速いところは何かに憑かれたように速い、というドラマティック・スタイル。第1楽章(20:58)のマグマのようなクレッシェンドは圧巻の一言。アンサンブルは精緻とは言えませんが、聴かせどころでの野性的な迫力が素晴らしいですし、第4楽章のような叙情的な場面でもオケの個性味が良く発揮されていて、弱奏時においても味の濃いハーモニーが絶えない、独特の個性感を匂わせる演奏だと思います。

交響曲第8番「千人の交響曲」:
音楽的な格調の高さと高水準の迫力を満たした好演とも言えるのですが、スヴェトラーノフにしてはオーソドックスで、いささか常套的かなという気がします。

交響曲第9番:
この全集中では、なぜか音質が突出的に悪いですね。全体にダイナミック・レンジが平板で、トッティの厚みが乏しく、ステレオ感も不自然なバランス、、、この音質のせいなのか、スヴェトラーノフの指揮ぶりも何となく淡泊で、全編76分というタイムの示すように、テンポも随分と速く、フレージングの呼吸が浅く、音質ともども煮え切らない内容に終始している、そんな風に思えましたし、第3楽章の中間部冒頭(5:01)で全くテンポダウンしないあたりは、私には奇抜というより意味不明としか思えませんでした。

交響曲第10番の第1楽章アダージョ:
この演奏には惚れぼれするばかりで、このコンビとしては会心に近い演奏展開ではないでしょうか。まるでワーグナーを思わせる、むせ返るような響きの濃度と、その深々とした情感が素晴らしく、クライマックスでの絶叫も迫真の極み。聴いていて実直に胸打たれる演奏でした。

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