カルロス・クライバー/シュトゥットガルト放送響によるボロディンの交響曲第2番


ボロディン 交響曲第2番
 C・クライバー/シュトゥットガルト放送交響楽団
 E・クライバー/NBC交響楽団
 ヘンスラー 1972年/1947年ライヴ 93116
93116

昨日の続きになりますが、「カルロス・クライバー~ある天才指揮者の伝記(上)」で言及されている録音として、今日はボロディンの交響曲第2番について書きます。

なぜクライバーはこの曲を選んだのか。それは、この曲を気に入っており、すでにキューバとニューヨークで、父親の指揮による演奏を聴いていたからである。クライバーによる交響曲の演奏は、1972年12月12日、ヴィラ・ベルクにあるシュトゥットガルド放送(SDR)の放送用スタジオで、聴衆を入れずに行われた。ドイツでは、この交響曲は中心的なレパートリーにあったとは言い難く、そのため残念ながら、この素晴らしいクライバーの録音も、どちらかといえばあまり注目を集めるには至らなかったと言わざるを得ない。シュトゥットガルドのレーベル、メディアフォンがこの録音を(あまり良い編集とは言えないまでも)初めて商品化するまでは、いくつかの海賊盤に頼らざるを得ない状況が長く続いた。2004年、南西放送(SWR)とヘンスラー社が共同で発表した新しい盤は、1947年ニューヨークの父親の演奏と、この1972年シュトゥットガルドの息子の演奏を収録した素晴らしいものだった。
               (以上、評伝のP.289)


このCDにカップリングされている父エーリッヒのボロディンの方は、1947年12月のニューヨークでのコンサートのライヴ録りですが、上記引用にある「ニューヨークで、父親の指揮による演奏を聴いていた」というのは、実は当該コンサートのことを指しています(そのことは評伝のP.42で言及されています)。

このカルロスのボロディン録音に関しては以下のような後日譚が書かれています。

SDRとクライバーによる共同作業は成功を収めたにもかかわらず、クライバーをもう一度捕まえることはできなかった。オーケストラの楽団長フライフォーゲルも、同じようにミュンヘンを訪れ、クライバーを獲得しようとしたが、「クライバーはわたしに、一流オーケストラからの招待状の束を見せるんです。契約の部分は白紙のままのね。それで、あらゆる懇願は無駄だと知ったのです。我々とはレヴェルの異なるオーケストラの名前がそこに揃っているのですから。」
               (以上、評伝のP.290)


そういうわけで、このボロディン以後、クライバーとシュトゥットガルド放送響との録音は遂に為されなかったのですが、その「レヴェルの異なるオーケストラ」というのが、おそらくドレスデン・シュターツカペレなりバイエルン国立管弦楽団なり、あるいはウィーン・フィルなりということになるのでしょうか。

ところで、評伝に「いくつかの海賊盤に頼らざるを得ない状況」と書かれているように、このカルロス・クライバーのボロディンに関しては、長らく海賊盤が流布していたのでした。

私も、このヘンスラーの正規盤を入手する以前に、以下の海賊盤を入手し、それで当演奏を初めて耳にしました。

HR4410
ボロディン 交響曲第2番
 C・クライバー/シュトゥットガルト放送交響楽団
 メモリーズ 1972年 HR4410

上記メモリーズ盤の音質は、テープ・ノイズがかなり多めで、それなりに聴き苦しい感じもするのですが、ほとんどリマスタリングを施していないと思われるため、ことソノリティの生々しさという点では抜群で、はち切れんばかりのダイナミクスの感触が聴いていてジリジリと伝わってくるようです。

対して、正規盤のヘンスラー盤は、ノイズ感が圧倒的に低く、上記メモリーズ盤より遙かに聴き易い音質ですが、ノイズリダクションの影響からか、メモリーズ盤のそれと比べて多少なり音響的な彫りが浅いかと感じられなくもありません。

ここでのカルロスの演奏に関しては、なにしろ有名な演奏ですし、私などが今さら何か言うこともないのですが、このヘンスラー盤でエーリッヒ指揮の方のボロディンを初めて聴いた時、それがカルロスのボロディンに随分と似ていることに軽く驚いた覚えがあります。もちろん、これは正確には「カルロスのボロディンがエーリッヒのそれに似ている」と言うべきでしょうけれど、、

いずれにしても、このヘンスラー盤というのは、カルロスのエネルギッシュなボロディン演奏のコンセプトが、父エーリッヒのそれに由来していることが、おそらく誰の耳にも明白に判るようなCDだったのですが(特にテンポ感がソックリですね)、あの評伝を読むと、そのあたりのことが裏付けられていて、読んでいてやっぱりと思われたのでした。

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