カルロス・クライバー/ウィーン・フィルによるベートーヴェンの交響曲第5番「運命」


ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」、交響曲第7番
 C・クライバー/ウィーン・フィル
 グラモフォン 1974~76年 POCG-9526
POCG-9526

昨日に引き続き、クライバーの評伝「カルロス・クライバー~ある天才指揮者の伝記(上)」に関する話になりますが、昨日も書きましたように、この評伝には、クライバーの残した一連の録音につき、各演奏の背景や裏話といったエピソードが豊富に記載されています。

とはいえ、これはまだ「上巻」ですので、取り上げられている録音も1970年代後半の時期までのものに限られています。

それを具体的に見ますと、まずオペラ以外のジャンルの正規録音としては、以下のものが取り上げられています。

①ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」・第7番
②シューベルト 交響曲第3番・第8番「未完成」
③ボロディン 交響曲第2番
④ドヴォルザーク ピアノ協奏曲
kleiber-1

また、オペラ(全曲盤)の正規録音としては、以下のものが取り上げられています。

⑤ウェーバー「魔弾の射手」
⑥J.シュトラウスⅡ世「こうもり」
⑦ヴェルディ「椿姫」
⑧R.シュトラウス「ばらの騎士」
kleiber-2

これら以外に、実は非正規の録音で聴ける演奏も相当数取り上げられており、こちらに関しても、出来れば別の機会にでも触れたいと思っているのですが、ともかく以上のようなクライバーの録音というのは、オペラであれ交響曲であれ、いずれも名盤中の名盤と認知されているものばかりで、私なども一体これまで何回くらい聴いたのか分からないくらい耳にしてきた録音ばかりです。

こういった、我々にとって御馴染みな録音について、隠されたエピソードが色々と書かれているのですから、これはもう面白いどころの騒ぎではありませんでした。

例えばクライバーのウィーン・フィルとの初録音となった、ベートーヴェン「運命」の録音については、以下のようなエピソードが掲載されています。

楽員の多くは、演習の間、クライバーによる具体的な比喩の数々に馴染めなかった。クライバーはこの比喩を用いて、作品が持つ単なる楽譜以上の意味合いを伝えようと試みたが、クライバーがファゴット奏者に、猿の群れを自分の周りに集める猿山のボスを連想してくれと要求した時は、さすがの彼らも困惑した。ウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・キュッヒルは、当時をこう振り返る。『クライバーから普通の説明を期待することはできません。「走る豹のように演奏しろ、とか言われるんですから。だれかがある部分を下げ弓か、上げ弓か、どちらで弾くのかと訊いた時、クライバーは怒りましたね』。オーケストラの慣習的な演奏法と練達の技術と、クライバーがライヴだけでなくレコード録音でも行おうとした奏法とは、頻繁に衝突を繰り返した。クライバーの芸術上の理想に従えば、すべてが完全にぴたりと揃っている必要は、雰囲気が炎のように燃え上がることが大事だった。・・・
               (以上、評伝のP.428~)


こういうのを読んでから、改めて当該録音を聴き直すと、何だか新鮮な感じがするものですから、この年末年始にかけて、私は本の中で取り上げられているクライバーの録音を、片っぱしから聴く羽目になってしまいました(ので、年末に買い込んだ新譜が、全然聴けないという有り様でした)。

この「運命」にしても、あの優雅なウィーン・フィルが、よくぞここまで、というくらいの大演奏だと思うのですが、上記のようなことを読んでから聴くと、そのあたりの背景が僅かながらに垣間見れた、そんな気もしたのでした。

コメント

 

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog
Copyright © クラシックCD感想メモ All Rights Reserved.