カンブルラン/バーデン=バーデン・フライブルクSRW響によるリームの「神とは何か」


リーム 「神とは何か」「描かれざる絵」「女/声」
 カンブルラン/バーデン=バーデン・フライブルクSRW響他
 ヘンスラー 2007年・1991年・1989年 CD93.236
CD93236

ドイツの現代作曲家ヴォルフガング・リームの作品の継続的な録音を続けているドイツ・ヘンスラーから先般リリースされた、リーム作品3曲を収録したアルバムを聴きました。

これは「ヴォルフガング・リーム・エディション」の第4集とのことで、以下の3曲が収録されています。

①「神とは何か」(2007年作曲)
②「描かれざる絵」(1994年作曲)
③「女/声」(1989年作曲)

①は合唱とオーケストラのための作品(ここでの演奏時間は33分)で、シルヴァン・カンブルランの指揮、バーデン=バーデン・フライブルクSRW交響楽団の演奏と、SRWヴォーカルアンサンブルの合唱により、2007年に録音されています。

②は純粋なオーケストラ作品(ここでの演奏時間は16分)で、フリードリヒ・ゴルトマン指揮、バーデン=バーデン・フライブルクSRW交響楽団の演奏により、1991年に録音されています(1994年作曲なのに91年に録音というのも不可解ですが、ここではライナーノートの表記に従います)。

③は2人のソプラノとオーケストラのための作品(ここでの演奏時間は20分)で、ミヒャエル・ギーレンの指揮、バーデン=バーデン・フライブルクSRW交響楽団の演奏と、イゾルデ・ジーベルト、カルメン・フギスの両ソプラノの歌唱により、1989年に録音されています。

本CDは、とりわけ①に興味を惹かれて購入したのでした。というのも、カンブルラン指揮のリーム作品の録音として昨年リリースされた「離接輪郭(Dis-Kontur)」の演奏での強い印象が記憶に新しかったからです。

加えて、現代作曲家リームの最近の作風に対する興味もありました。リームというと、その際立って多作な作曲スタンスで知られているところで、これまでの作品総数も500作を超えるとされているのですが、特に21世紀に入ってからは、さすがに往時の勢いは衰えてきたようでもあり、その発表作品も明らかに減少してきているのです。

それで聴いてみたのですが、何と言いますか、リームも随分と作風が丸くなったな、というのが第一印象でした。

その前に、この「神とは何か」という作品について、ライナーノートに書かれていることから簡単に説明しますと、これはリームが1997年5月17日に南ドイツ新聞に掲載された記事を読んで着想を得たとされる作品で、その記事の内容というのが、遙か昔24人の哲学者が神について議論を行った末、各人が神の定義を述べる、という内容のものなのです(その24の神の定義も、ライナーノートに書かれていますが、これはラテン語なので残念ながら私には内容が分かりません)。これらはヨーロッパ神知学の基礎をなすテクストであるとも書かれています。

そして、これら24のラテン語のテクストを声楽合唱が朗唱するという形でリームが音楽として仕上げた作品が、この「神とは何か」ということのようです。

その演奏に耳を傾けると、リームらしい手の込んだ管弦楽技法に基づく神秘的な音彩に声楽合唱が精妙に絡み合い、すこぶる特異にして超常的な音響世界が全編に披歴されていて、とても一言では表せないくらいに複妙を極めた趣きの音楽に仕上げられており、その意味では確かに現代を代表する作曲家リームの面目躍如という印象も聴いていて強く感じさせるものでした。

ただ、昨年の「離接輪郭(Dis-Kontur)」での、それこそ世界の終末のイメージをも湧き起こすような、空恐ろしいほどの凄味に満ちた音楽の気配感からすると、全体的に音楽の雰囲気がまろやかに傾いていて、要するに作風が丸くなったのではないか、という印象も少なからず感じられるのです。

「離接輪郭」はリームの22歳の時の作品、今回の「神とは何か」は55歳の時の作品ですから、作風に開きがあるのは当然なのですが、リーム往年の尖鋭な色彩感、鮮烈なまでの表現主義的な指向からすると、やや表出力が大人しい気配もあるので、それが少し気になったのでした。

とはいえ今回の「神とは何か」においても、(23:40)あたりから奈落に落ちたかような凄まじい音響展開が聴かれますし、その音楽が大きく老け込んでいるという感じは受けません。あくまで、リーム初期の作風と比べてという話です。

いずれにしても併録の2曲を含めて、リームの比較的近年の作品を、良質な演奏と、良好な音質で耳にし、改めて作風の特異性と、その変遷について目を向ける機会を与えられました。その点では本CDのリリースに感謝ですが、この種のアンノウンな音楽に関しては、できれば日本語による作品解説が欲しいですね。

コメント

 

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog
Copyright © クラシックCD感想メモ All Rights Reserved.