バーンスタイン/ベルリン・フィルによるマーラー交響曲第9番OIBPリマスタリング盤の音質に関して


マーラー 交響曲第9番
 バーンスタイン/ベルリン・フィル
 グラモフォン 1979年ライヴ 4778620
4778620

昨年末にリリースされた、レナード・バーンスタイン指揮ベルリン・フィルの演奏によるマーラー交響曲第9番の新リマスタリング(OIBP)盤を聴いて、その音質が従来盤に対し良くなっているどころか、逆に悪くなっているとしか思えず、聴き終えて愕然とした気持ちにさせられたことを以前に書きました。そのことにつき、今日は少し詳しく書きます。

まず、ここで私の言う従来盤というのは、以下のCDのことです。

POCG1509
マーラー 交響曲第9番
 バーンスタイン/ベルリン・フィル
 グラモフォン 1979年ライヴ POCG-1509/10

上記の従来盤の音質に対し、今回リリースされた新リマスター盤の音質というのは要するに、全体的に残響感を高めて、ふっくらと円やかにさせたようなソノリティとなっているのです。これは一番やってはいけないことをやってしまった、というのが私の率直な印象です。

事実この音質の違いを、聴いていて明瞭に実感させられるのは、特に渾身の最強奏により形成される幾つかのクライマックスの場面での響きの迫真性においてなのですが、それは言うまでもなく演奏自体の訴求力に、ダイレクトに影響を及ぼしてしまっています。

例えば第1楽章の中盤のクライマックスである第201小節前後を、まず新リマスター盤の(12:01)-(12:10)で聴き、その同じシーンを従来盤で耳にすると、フォルテッシモの熾烈さにおいて如実に差が感じられますし(特にシンバルのクレッシェンドの迫力、あるいはティンパニの打音の強さ等が新リマスター盤では明らかに遜色する)、他の同様の場面にしても総じてフォルテッシモの凄味が削がれ、音響的なインパクトが鈍くなっており、ひいては聴かせどころでの音場展開において、せっかくの演奏本来の持つ、それこそ振り切れたような音響的迫真性を感得しにくい状況になってしまったように、私には思われてなりません。

それでは他の要素はどうかと言うと、アナログテープの(シャーという)ノイズレベルは双方ほぼ同じくらいの高さで、新リマスター盤の方が音響的な解像度が向上している感じは特にしませんし、従来盤に比べて音像が更に引き締まって聴こえたり、細部の表情がブラッシュアップされたような感じに聴こえたりというような印象も特に受けません。

以上から思うに、この新リマスター盤の音質改善というのは単に余計なエコーを掛けただけではないのでしょうか。そもそも従来盤の音質というのは極めて良質で、聴いていてオーケストラ・サウンドがリアルに展開されるような、およそ申し分のないものだったのに、今回のリマスター盤はヴェールを被せたような見通しの悪さを与えただけで、少なくとも私には音質改善に何ら貢献しているとは思えないのです。

以上が本リマスター盤の音質に対しての、私なりの率直な印象になります。しかし、これはあくまで私の印象であり、聴き手によっては、私とは全く反対の意見をもたれるかも知れません。

というのも、このリマスター盤は従来盤と比べて、確かに「耳当たり」が良くなっているからです。上品な感じの音質になった、と言い換えてもいいかもしれないですが、ともかく前述のようなエコー効果により、表面的にはリッチなソノリティの感触が付加されていて、従来盤よりもゴージャスで潤いのある音質であるという雰囲気が強く押し出されています。さらに言うなら、同じマーラーの9番として、カラヤンが同じベルリン・フィルを振り、このバーンスタインのライヴの直後にスタジオ録音した、あの演奏の雰囲気に何処かしら近いような肌触りが感じられるように思うのです。

ですから聴き手によっては、このリマスター盤の方の音質を好まれることがあっても不思議はないと思いますし、もし当該カラヤン盤を好むような嗜好を持たれているのなら、今回の新リマスター盤はむしろ歓迎すべき音質ということになるかもしれませんが、しかし私のように、そのカラヤンのスタジオ録音に何ら感じるものを見いだせない聴き手に取っては、今回のリマスター盤の音質は、どうにも受け入れ難いと言わざるを得ないのです。

以上、私としては今回リリースされた新リマスター盤が今後、当該演奏のデフォルト録音として認知されるようにならないことを祈りたいと思いますが、もしCD2枚組の従来盤が廃盤となり、その供給がストップするような事態になったら、この歴史的ライヴの演奏の真価を後世に伝える上で、それこそ一大事になるのではないかと本当に心配しています。

コメント

 

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog
Copyright © クラシックCD感想メモ All Rights Reserved.