ミュンシュ/パリ管によるベルリオーズの幻想交響曲(スタジオ録音盤)


ベルリオーズ 幻想交響曲
 ミュンシュ/パリ管弦楽団
 EMIクラシックス 1967年 TOCE-7008
TOCE-7008

一昨日、ミュンシュの指揮によるパリ管弦楽団の発足演奏会のライヴ盤を聴いての感想を掲載しましたが、あれから日を置いて、今度はミュンシュがパリ管を指揮してEMIに録音したベルリオーズ幻想交響曲の、かの有名なスタジオ盤の方も改めて聴き、それと今回リリースされたパリ管の発足演奏会での幻想交響曲の演奏との表現の異同について探ってみました。

すると驚いたことに、ほぼ同じ時期に係る演奏であるにもかかわらず、運用面で少なからぬ違いが見受けられるのです。

録音時期については、今回リリースされたパリ管の発足演奏会は67年11月14日で、EMI盤の録音は同年10月23~26日ですので、両演奏は一ヵ月と離れていない時期の演奏ということになります。

まずテンポ面は全体的にパリ管発足演奏会でのライヴの方が、スタジオ盤のそれより概ね速めで、特に第3楽章はライヴの方が演奏タイムで2分も短くなっています。音楽の雰囲気としても、今回のライヴの方がスタジオ盤の演奏より、ある種の抜き差しならない急迫感が、より強く打ち出されているような感じがするのですが、それはもしかすると、このあたりのテンポ感の違いが一因かも知れません。

そしてデュナーミクの動きの面でも、全体的に今回リリースのライヴの方が、ひとまわり研ぎ澄まされたような、尖鋭な感じを受けます。

例えば第2楽章の冒頭、序奏部の最後のところ(第32~36小節)を今回のライヴで聴くと、その弦パートに指定されたff→f→pにミュンシュは従っておらず、それどころか逆にクレッシェンド的な処理さえ与えているのです。

ここは普通ディミヌエンドを掛ける場面であるだけに、ミュンシュの「幻想」の異彩を強烈に印象づけられるシーンとも言えるのですが、同じシーンをEMIのスタジオ盤で聴くと、その異彩性が今回のライヴほど引き立っていないことに気付かされました。スタジオ盤でも確かにディミヌエンドは掛かっていないのですが、ライヴのようにクレッシェンドが掛かっているという感じまでは伝わらないので、そのぶんライヴの方が、感極まって感情が弾けるといった趣きが強く打ち出されている印象を受けます。

もともとミュンシュの「幻想」は、その演奏展開における主観性の激しさゆえに独特であり、それが聴き手によっては抵抗感を生み出す原因ともなるのですが、その主観の激しさというか、主観的運用の発露の度合いという点では、少なくとも私の印象では、全体的に今回リリースされたパリ管発足演奏会での「幻想」の方が、かのスタジオ盤を一歩しのいでいるのではないかと思われる局面が多々ありました。

それは一昨日も書いたように、このEMI盤と聴き比べる前から、うっすらと感じていたことなのですが、今回あらためてEMI盤と比べてみて、その感覚が自分なりに裏付けられたのでした。

シャルル・ミュンシュは、よく「ライヴの指揮者」であると言われ、実際、残されている彼の放送録音などを耳にすると、確かにライヴだとスタジオ録音とは一味違った、それこそ途轍もない燃焼力が漲る演奏が展開されていることが少なくないのですが、そのような傾向は、例えば以下のボストン響との幻想交響曲のライヴ盤にも良く現われています。

TH067
ベルリオーズ 幻想交響曲
 ミュンシュ/ボストン交響楽団
 "0""0""0"CLASSICS 1962年ライブ TH067

上記プライヴェート盤の演奏については、こちらの方に感想をメモしてあるのですが、ここでの「幻想」も、同年のボストン響との同曲のスタジオ盤よりも、さらに燃焼力に溢れた熱演となっています。こういった図式が、おそらく今回リリースの「幻想」にも当てはまるように思われます。

しかし、あのパリ管とのスタジオ盤の「幻想」というのは、その演奏内容の超絶性により、これまで長らく彼のベストモードでの「幻想」と看做されてきた録音です。それだけに、今回のパリ管発足演奏会での「幻想」を聴いた時の私の驚きは強烈なものでした。あのスタジオ盤の表出力を上回るミュンシュの「幻想」が存在するとは、まさか思いもよらなかったというのが率直なところです。

そういうわけで、今回EMIのスタジオ盤の「幻想」と聴き比べてみて、改めてパリ管発足演奏会での「幻想」が、いかに人間業を超えた圧巻無二の演奏内容であるかが、ひしひしと実感されましたし、あれだけの大舞台でこれほどの大演奏を成し遂げてしまう、ミュンシュの指揮者としての底知れない力量にも驚嘆せずにはいられませんでした。

コメント

 
幻想交響曲は、高校生だった40年ちかく前からミュンシュ/パリ管のLPレコード(スタジオ録音)を愛聴しております。パリ管発足演奏会の録音の存在は知りませんでしたが、音像の明確さという点でライヴ録音がスタジオ録音を凌駕することはほとんどの場合難しいと思います。ミュンシュ幻想のスタジオ録音についてはまさにこの点が出色であり、弦の一本一本が手にとるように浮き上がって聞こえるあの音像のシャープさは、何物にも替えがたいと感じます。ちなみに同じ音源から作られたCDも持っていますが、こちらはダメです。LPとは似ても似つかない別物(ミキシング)であり、一度聴いて棚にしまったままです。
「第一家電が製作したミュンシュ幻想のCD」がLP時のミキシングを採用していたと聞いていますが、手に入れることはかなわないようです。
コメント有難うございます。

貴重な御意見および情報をいただき感謝いたします。
今後とも御教示のほど宜しくお願いいたします。

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