クラッゲルードのヴァイオリン演奏によるシンディングのヴァイオリンとピアノのための作品集(第1集)


シンディング ヴァイオリンとピアノのための作品集(第1集)
 クラッゲルード(vn) ハドラン(pf)
 ナクソス 2006年 8.572254
8572254

ナクソスから最近リリースされた、クリスチャン・シンディング「ヴァイオリンとピアノのための作品集」を聴きました。ヘンニング・クラッゲルードのヴァイオリンと、クリスチャン・イーレ・ハドランのピアノによる演奏です。

ヘンニング・クラッゲルードというと、私には2004年にリリースされたシベリウスとシンディングのヴァイオリン協奏曲を収録したCDでの圧倒的な名演ぶりが思い浮かぶのですが、今回リリースのアルバムでも同様にシンディング作品が取り上げられています。

収録曲は以下の通りです。

①カントゥス・ドロリス Op.78
②エレジー第1番 Op.106-1
③ロマンスニ長調 Op.79-1
④アルバムの綴り Op.81-2
⑤古い方法 Op.89-2
⑥セレナーデ Op.89-1
⑦古風な組曲 Op.10
⑧アンダンテ・レリジオーゾ Op.106-3
⑨ワルツ ト長調 Op.59-3(第1稿)
⑩ワルツ ホ短調 Op.59-4
⑪ワルツ ト長調 OP.59-3(第2稿)
⑫エア Op.81-1
⑬子守歌 Op.106-2

クリスチャン・シンディングは、グリーグ、スヴェンセンと共にノルウェーの3大作曲家として知られる、後期ロマン派の作曲家なのですが、その作風にはドイツ・ロマン派の音楽のような雰囲気も強く(ライプチヒ音楽院で作曲を学んでいます)、今回のアルバムでも、どこかシューマンの作品を聴いているような感覚に近しいものを感じました。

少なくともノルウェーの民族的な色彩は、それほど分かりやすい形では表面化していないのですが、聴いていると、そこかしこに北欧の抒情的な気分が音楽の中から不意に顔を出してきて、いつのまにか北欧の空気に触れているような爽快感、すがすがしさにドップリと浸っている自分がいました。

クラッゲルードのヴァイオリンは、素晴らしいの一言で、1744年製ガルネリから繰り出される響きの芳醇なこと。個々の音符に対する集中力、ボウイングの凝縮力、いずれも前回のシベリウスの時と変わらず抜群で、全体的にくつろいだムードの、和やかでロマンティックな曲が多くを占める中、良い意味でのピリッとした緊張感が、安易なムード音楽とは一線を画した、言わば作品の真の魅力の方に聴き手の意識を誘導するような、そんな気概の漲る演奏でした。同郷の若手ピアニスト、ハドランとの息の合った呼吸や連携も見事というほかありません。

全13曲における白眉を挙げるなら、やはり⑦でしょうか。この組曲はシンディングの最も有名な曲のひとつで、ライナーノートに書かれているところによると「これまでヤッシャ・ハイフェッツ、フリッツ・クライスラーといった偉大なヴァイオリニスト達によりコンスタントに演奏されてきた」作品なのですが、実際、かなり高度な演奏技巧を要求するヴァイオリン曲で、特にハイフェッツが好んで演奏したと言われています。

ここでのクラッゲルードの演奏は冒頭のプレストからアグレッシヴにボウイングを切り込み、それこそ往年の巨匠ヴァイオリニスト達にも優に伍するほどのテクニックの冴えで弾き進んでいくのですが、そこには同郷の作曲家に対する深いリスペクトを下敷きとした、作品に対する深々とした共感というものがそうさせるのか、ものすごいテクニックの冴えなのに、ボウイングにドライな印象がまるでなく、むしろ弾き手が音楽に込められたパッションと一体化し、心ゆくまで楽しみながらメロディを歌い込んでいるという風であり、聴いていて心に深く染み入るような、その有機的な音楽の味わいに、自ずと感動の境地に誘われる思いでした。

以上、このCDを耳にして、あらためてクラッゲルードのシンディング作品に対する適性や共感の深さが尋常でないことを認識させられました。続く第2集も楽しみに待ちたいと思います。

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