ジュリーニ/ベルリン・フィルによるブルックナー交響曲第8番のライヴ


ブルックナー 交響曲第8番
 ジュリーニ/ベルリン・フィル
 テスタメント 1984年ライヴ JSBT28436
JSBT28436

カルロ・マリア・ジュリーニがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮した、ブルックナー交響曲第8番のライヴ録音を聴きました。

これはテスタメントから先週リリースされたCDで、演奏は1984年2月におけるベルリン・フィルハーモニーザールでのコンサートのものです。

ジュリーニのブルックナー8番と言えば、ウィーン・フィルを指揮したスタジオ録音がグラモフォンからリリースされていますが、それは1984年5月にウィーン・ムジークフェラインザールで収録されています。今回リリースされたベルリン・フィルとのブル8は、そのスタジオ録音より3ヶ月前の演奏ということになります。

445529-2
ブルックナー  交響曲第8番
 ジュリーニ/ウィーン・フィル
 グラモフォン 1984年 445529-2

上記ウィーン・フィルとのスタジオ録音については、別館の方に感想を書いているのですが、ジュリーニ晩年の深みのある音楽の流れに、ウィーン・フィルのアンサンブルが最高のパフォーマンスで応えた超名演であり、数多くのウィーン・フィルのブル8の中でも、少なくともデジタル録音に限るならベストに位置づけられる演奏ではないかと感じていました。

今回リリースのライヴは、そのスタジオ盤と時期的にも近く、オーケストラの違いや、ライヴとセッションの違いを含めて、どのようなブルックナーが聴けるか、興味深く耳を傾けてみました。

それで聴いてみたのですが、全体としてスタジオ録音と同じようにスロー・テンポをベースとしながら、ベルリン・フィルから美しいカンタービレのフォルムを引き出していて、まさにジュリーニならではのブルックナーという感じがしますし、ライヴならではの演奏の生々しさもあり、同時期のスタジオ盤よりも強い表現力に聴いていて心打たれる局面も多く、これをもしナマで聴いたなら、それこそ一生の記念ともなる演奏ではないかという気さえします。

ライヴとは言え、アンサンブルのバランスに対する吟味の度合いはスタジオ盤にほぼ比肩する水準にあり、全楽器が鳴り切った時の響きの溶け合いなどの素晴らしさを始め、練りに練られ、高度に完成された演奏という印象を受けるのですが、それにしても全編で86分という長丁場(ノヴァーク版としては最長の部類に入るでしょう)を、緊張感を絶やさず弛緩なくアンサンブルを組上げるジュリーニの力量には、聴いていて敬服するばかりですし、同時にジュリーニの展開する巨匠風なブルックナーに対し、最高のレスポンスで応答するベルリン・フィルの合奏力にも驚嘆の念を禁じ得ませんでした。

ウィーン・フィルとのスタジオ盤との違いについては、完成度としては多分互角だと思うのですが(実際このライヴをスタジオ録音だとして聴かされても私は疑わないと思います)、ウィーン・フィル盤での濃厚な音色感は全体的に大人しく、特に管パートの艶やかさに差が認められ、ウィーン・フィル盤でウィンナ・ホルンが隆々と響きわたっているフレーズが、こちらのベルリン・フィル盤だと響きが少々薄かったりと、ことアンサンブルの深いコクに関しては、さすがにウィーン・フィル盤には一歩を譲るかという印象を感じました。

逆にウィーン・フィル盤に優位する点は、フォルテでのダイナミクスの逞しさ、そして艶やかというより質実剛健な響きの色合いと、そこから導かれる重厚で渋い音楽の佇まいといったあたりだと思うのですが、ジュリーニの展開する音楽のコンセプトが両盤で同一と思われるだけに、やはりオーケストラの違いというのが大きく作用していて、ウィーン・フィル盤とは趣きを異にする個性感や深みが演奏に付与されているのが明瞭に認められ、興味深い感じがしました。

もうひとつ、私が本ライヴ盤を耳にして興味深く感じたことは、例えば第1楽章の第10小節から弦がメゾ・フォルテのメロディを奏でる場面で、そのメロディをジュリーニが指揮しながらハミングで口ずさんでいるのが聞こえるなど、時々メロディを気持ち良さそうに口ずさむ場面が聴かれたことです。

この点、私はスタジオ盤の感想の方で、「ブルックナーの音楽に、これほどまでのメロディの魅力が隠れていたのかと、このジュリーニの演奏で初めて意識させられるような部分が少なからずある」と書いたのですが、ライヴ演奏でもメロディを大事にしている様子が、前述のように明確に伺われたので、ああやっぱりという風に思ったのでした。

音質については、アナログ録音ゆえの経年劣化が心配されたのですが、聴いてみると状態は良好で、ノイズ水準はかなり低いですし、解像度も申し分なく、ライヴ録りの制約ゆえか音質の彫りが少し浅く全強奏での中域のエネルギーに少々物足りなさも感じるものの、全体的には演奏会場の臨場感が高感度で捕捉された優秀な音質と感じました。

以上、このブルックナーは、名匠ジュリーニの力量のほどが存分に発揮された地点に、ベルリン・フィルの素晴らしい表現力が結託して生まれた、充実の極みにある演奏であり、また聴き終えて絶大な感銘の残る演奏でした。録音から四半世紀も眠り続けた音源なのですが、もし他にも、このような演奏が久しく眠っている状態にあるとすれば、どんどん発掘してもらいたいと願わずにいられませんね。

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