バックハウスとベーム/ウィーン・フィルによるブラームスのピアノ協奏曲第2番(デッカのスタジオ盤)


ブラームス ピアノ協奏曲第2番
 バックハウス(pf) ベーム/ウィーン・フィル
 デッカ 1968年 POCL-9928
POCL-9928

先週リリースされたバックハウスとベーム/ウィーン・フィルの共演によるザルツブルグ・ライヴについての感想を、一昨日書いたのですが、それを耳にしたのに続いて、同じ顔合わせでデッカにスタジオ録りされたブラームスの第2コンチェルトの録音を久々に聴いてみました。

一昨日のザルツブルグ・ライヴが68年8月の演奏だったのに対し、このスタジオ録音は67年4月のものですが、バックハウスの死去は69年7月ですので、双方とも最晩年の時期に係る録音になりますね。

POCL-9928-2

両演奏を対比してみると、全4楽章の演奏時間はもとより、造型の取り方やフレージングの付け方といった特徴も概ね共通していて、バックハウスとしてほぼ盤石に固まった演奏様式であることが伺われます。

ところで、一昨日は「やはりライヴならではの良さというものはある」と書いたのですが、今回あたらめてスタジオ盤を耳にし、ライヴのそれと比べてみると、どうも逆に「スタジオ盤ならではの良さ」というものも確かにあるのだなということを感じました。それを端的に言うなら、「完成度」と「音質」という点になります。

完成度についてはスタジオ録りである以上言わずもがなですが、むしろ驚異的なのは音質でしょう。昨日も書きましたように、ザルツブルグ・ライヴの音質も決して悪くはなく、むしろ年代を考えると上質だと思うのですが、それでもこのスタジオ盤の音質と、こうしてひき比べると少なからぬ遜色感を否めない感じがします。その印象が特に強いのがウィーン・フィルのアンサンブルの響きにおいてであり、両盤を比べてみると、オーケストラの響きの強さがこちらのスタジオ盤の方が大幅に勝っていて驚かされるくらいです。

しかし、この点に関して私がむしろ印象深く思ったのは、これだけ両盤でオーケストラの響きの色彩感に差違が認められるにもかかわらず、バックハウスのタッチの感触自体は、双方において少なくともオケほどには差違が大きくないように感じられることです。なまじバックのオケの響きの色彩的な差違が顕著なだけに、なおさらそれが聴いていて強く意識されます。

この点に関し、実は一昨日は時間が無くて書かなかったのですが、今回リリースされたザルツブルグ・ライヴのブックレットには、ゴッドフリート・クラウスの簡単な演奏評が掲載されていて、それが私にはちょっと興味深く思えたのでした。

そこではバックハウスのピアニズムについて、クラウスは「A Unity of the Traditional and the Contemporary」という表現を用いて称賛しています。

つまり伝統性と現代性の融合という風に評しているわけですが、この表現は私の感覚からしても、言い得て妙だなと感じました。というのも、バックハウスのピアニズムには、確かにそういう独特の2面性があると思われるからです。

例えばこのブラームスにしてもそうで、そのピアニズムにおける造型形成やフレージング展開においては、いわゆるロマンティック様式に傾斜しない、明らかに古典的なものであって、それは新古典的という切り口からすると当時としてはモダーンな表情付けなのでしょう。しかし、そういう現代的な様式にしては、その個々のタッチの色彩感が、およそ現代的なピアニズムの華やかさに対し敢然と背を向けたような、禁欲的なくらい飾らない、枯淡で質朴な音色となっていて、それは現代的というよりむしろドイツ伝統の響きに深々と根ざしたピアニズムを指向しているような感じがします。

こういう背反性が、確かにバックハウスのピアノにはあると思うのですが、それをクラウスは伝統性と現代性の融合という言葉で端的に言い表してみせたので、それを読んで思わずハッとしたのでした。さらにスタジオ盤を聴いてみて、そのことを改めて実感したのですが、その理由は前述のとおりです。

私の印象としてもバックハウスのようなピアニズムの持ち主は、ほとんど他に例が無いように思っていたのに、何故そうなのかという理由については今一つ確信が無かったので、前記のようなクラウスの視点は、ちょっと印象深い感じがしました。

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