オーケストラ・リベラ・クラシカの演奏会の感想


オーケストラ・リベラ・クラシカの演奏会(浜離宮朝日ホール 10/17)の感想です。

オーケストラ編成はハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンすべて6型、バランスは第1ヴァイオリン6人に第2ヴァイオリン5人、ヴィオラとチェロが各4人、配置はステージ向かって左から第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリンと並べた対向配置でした。

例のごとく入念なチューニング(OLCはチューニングに普通のオケの倍以上の時間をかけますが、フレージングでヴィブラートを抑制する関係上、音程のブレが許されないからでしょう)に続いて、最初のモーツァルト・交響曲第29番冒頭の、麗しい主題フレーズが、透明感のある弦の響きを起点に滑らかに流れ出します。以降もアンサンブルにおける室内楽的なまとまりの揺るぎなさと、クリアーにフォーカスされたハーモニーの美しさと、ピリオド・アンサンブルならではの繊細なニュアンスと、そういった要素が混然として織り成す夢のようなモーツァルトが披歴され、いきなり凄い耳の御馳走だなと感じ入ったのですが、ただその雰囲気は、一様に女性的というのか、迫力面を前面に押し出すことはむしろ避けられていて、モーツァルトの29番としてはこれで充分としても、ハイドンの88番と、ベートーヴェンの1番でも同じ調子だったら少しマズいな、という気がしたのも事実でした。

これが次のハイドン・交響曲第88番になると、先のモーツァルトよりはアンサンブルに格段に力感と迫力が漲り出し、先程の心配が全く杞憂だったことを強く思い知らされるとともに、これまでCDなり実演なりで幾度となく耳にした「OLCのハイドン」が鳴りだした安堵感に、心地よく身を委ねて音楽に浸りました。彼らがハイドンを、いかに自家薬籠中のものとしているか、それが端的に伺われる演奏というべきでしょうか。ハイドンの綿密な設計によって創り出された音響的なイメージが、曖昧のないキリッとしたオリジナル楽器アンサンブルの手により、白日の下にされるような、そんな演奏。先のモーツァルトとはまた趣きを異にする耳の御馳走とでもいうべき音響の稠密ぶりと充実感に、聴いていて今さらながらに惹き込まれる思いでした。

休憩を挟んだベートーヴェン・交響曲第1番ですが、これは先のハイドンに輪をかけてアンサンブルの力感と迫力を前面に押し出した、OLCとしては異例とも思えるほどに熱のこもった演奏となっていたことに驚かされました。ことに最初のモーツァルトでの、クールで温雅なアンサンブルの佇まいと比べると、ほとんど別団体かというくらいの、鮮烈を極めたベートーヴェン。激しいアタックを伴う弦の厳しいボウイング、ここぞという時に繰り出す金管の最強奏の圧倒的な鳴りっぷり、そしてティンパニの激烈な強打。トッティでのホールを吹き飛ばすかのようなド迫力も素晴らしく、オリジナル楽器の飾らない音色の迫真も存分に引き立ち、これでこそベートーヴェンという感じがこよなく漂う、そんな見事な演奏でした。

こうして見ると、本公演でOLCは3人の作曲家の各交響曲に対し、その表情というか味付けをはっきりと差別化して臨んでいたことが、ほぼ明瞭に伺えました。最初のモーツァルトでは女性的な感じのソフトな表現から始め、ハイドンを中間点として、ベートーヴェンになるとむしろ男性的なイメージを強く押し出した、強烈なヴァイタリティとゴツゴツとしたハードな感触を伴う表現にシフトしていったのですが、その変化を聴き手に印象づけるのに、真ん中のハイドンが如何に重要な役を演じたか、それが振り返って印象的でした。

ただ少し気になったのが、OLCはヴァイオリン奏者における女性の比率が際立って高く、本公演でも第1ヴァイオリン6人は全員女性、第2ヴァイオリンも5人のうち4人までが女性という状態でした。対して弦低声部はほぼ男性奏者で占められています。こういうバランスだとアンサンブルにおいてある種のメリハリ、言うなればソフトでまろやかな高声に対比するハードで引き締った低声といった、絶妙なコントラストが付き、それがハーモニーの色彩に巧く立体感をもたらしているような感もありますが、もし今後OLCがベートーヴェンにさらに進むなら、曲によってはヴァイオリンパートに男性奏者を積極的に投入して、バランスを再構成した方が上手くいくような気がしなくもありません。

以上、本公演はOLCのオリジナル楽器オーケストラとしての幅広い表現力を改めて実感させられましたし、特に最後のベートーヴェンに到っては、多少の綻びはあっても、OLCの次のステージの可能性を存分に感じさせるとともに、浜離宮朝日ホールでの有終の美を飾るに相応しい感動的な演奏が披歴され、日本のオリジナル楽器アンサンブルの表現力の、ひとつの到達点を画すという意味でも意義深いコンサートと感じました。

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