ユロフスキ/ロンドン・フィルによるチャイコフスキーのマンフレッド交響曲


チャイコフスキー マンフレッド交響曲
 ユロフスキ/ロンドン・フィル
 ロンドン・フィル自主制作 2004年ライヴ LPO0009
LPO0009

おとといの更新では、ユロフスキ/ロンドン・フィルの新譜であるチャイコフスキー交響曲集についての感想を掲載したのですが、当該CDと合わせて購入した、同じ顔合わせによるチャイコフスキー・マンフレッド交響曲のCDを、今日は聴いてみました。

これは2004年12月、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールでのコンサートのライヴです。もともと2006年にリリースされていたCDですが、未入手でしたので、この機に購入しました。

聴いてみると、第1楽章冒頭の木管のフォルテッシモ開始からすこぶる表現力のある音色が耳に飛び込み、序奏部を通して、個々のフレーズを細やかに組み上げつつハーモニー全体に引き締った重みが付与されていて、聴いていて身が引き締まる思いですが、これが(5:09)からの強奏展開になるや、凄いパンチ力のある、ユロフスキならではのアグレッシヴなオーケストラ・ドライヴが披歴され、(6:02)あたりのティンパニ連打のもの凄さも特筆的で惹き込まれます。

そして、やがて(6:42)でロ短調に転じたアンダンテ、いわゆるアスタルテ楽想においては、先ほどまでのマンフレッドの懐疑地獄を慰めるかのような柔和で温かく、幸福感に満ちたアンサンブルの表情付けが耳を和ませてくれるのですが、コーダでは再び熾烈を極める最強奏で悲劇的に締め括り、すこぶる深い余韻が、聴き終えて刻みこまれる思いでした。このコーダにおけるアンサンブルの鋭敏なレスポンスは瞠目に値するもので、(16:27)あたりの弦の高揚力など、その沸点突破的ともいうべきボウイングの激しさに聴いていて言葉を失うほどです。

第2楽章は、第1楽章の終結との対比から、一条の明るい光の差すような色合いの楽想が提示されるのですが、その仄かな安逸の情感が、(2:30)からのアスタルテ主題を中核として、明晰で曇りのないアンサンブル展開の中からクッキリと描かれていて魅了させられます。続く第3楽章は牧歌的風景を描いた一幕ですが、耳当たりのよい響き一辺倒に傾くことなく、クールな視線で現世的な実在感のある表現を構築しようとするスタンスが聴いていて伺われるような演奏です。

終楽章は、冒頭からの山霊が乱舞するシーンで展開される、アンサンブルの豪快にして荒びた迫力に圧倒される思いですが、それは高度に洗練されたバーバリズムというのか、オーケストラのポテンシャルをフルに駆使しながら、再弱音から最強音にいたるまで、常に細心のコントロールの効いた稠密な音響の構築の中から、原始的なまでに荒れ狂う響きが展開される様は、聴いていて圧巻というほかなく、以降コーダにいたるまで、チャイコフスキーの誇大的ともいうような音画的描写を心ゆくまで堪能し、素晴らしいカタルシスとともに全編を聴き終えました。

以上、このユロフスキ/ロンドン・フィルの「マンフレッド交響曲」は、チャイコフスキーというより、むしろマーラーに近いくらいの情感振幅の激しさと、幅広いダイナミック・レンジが強烈に印象づけられる、おそらくユロフスキとしても会心に近い演奏内容ではないかと思いました。現在進行中の、チャイコフスキーのシンフォニー全曲チクルスの方も、もしかこれくらいの水準で為されたなら、驚異的なことになると思いますし、このコンビの現在の実力からしても、十分いけそうな気がします。

コメント

 

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog
Copyright © クラシックCD感想メモ All Rights Reserved.