ヨーラ・ギュラーによるショパンのマズルカと夜想曲集


ショパン マズルカ・夜想曲集
 ギュラー(pf)
 Doron 1956年 DRC4012
DRC4012

スイスのDoronレーベルから先月リリースされた、ヨーラ・ギュラーのショパン・アルバムを聴きました。

ヨーラ・ギュラーはロシア人を父に、ルーマニア人を母にもち1895年パリに生まれた女流ピアニストで、カザルスやエネスコといった多くの大芸術家と親交があり、第2次大戦前のヨーロッパ楽壇において華々しく活躍した演奏家のひとりとして知られています。

しかし大戦後は病に倒れ、演奏活動も低調となり、その録音も数えるほどしか残されていません。

今回リリースのショパン・アルバムはその貴重な録音のひとつですし、ギュラー独特のピアニズムの味わいを期待して演奏に耳を傾けてみました。

やはり、いい演奏だなと思いました。ギュラーのピアニズムの様式はかなり独特で、簡明に言うのは難しいのですが、新古典主義的な様式を基本としながらも、ロマン様式を自分の感性に託してまぶしたような妙感のあるフレージング、強弱自体はかなり抑制されているのに不思議なくらいな音域の広さを印象づけるタッチ、はかなくて甘美な音色、こういった要素が混然となって立ち現われるピアニズムの深みと奥行きに抗しがたい魅力があります。

11曲のマズルカでは、作品17の4に最も魅了されました。触れれば壊れるような、はかなく美しいピアニズム。このはかなさと美しさは、まさにギュラーならではのショパン、そんな気がします。あるいは作品50の3で、(4:41)あたりに聴かれる高揚の、えもいわれぬ甘美なエレガンシー。

5曲のノクターンもため息が出るほど魅力的でした。戦前の様式のような、そうでないような、いずれにしてもここでのノクターンに聴かれる、崩さないロマンティズムの味わいには何か人を強く惹きつける妖しさがあり、アルバムを聴き終えて格別の余韻の残る、そんな演奏でした。

音質は、全体にノイズを抑えてスッキリとした聴きやすいソノリティです。ノイズカットがいくぶん実在感を削いでいる気配もなくはないですが、モノラルながらもギュラーのピアニズムの味わいが良く伝わってくる感じです。おそらくレコーディング・エンジニアのアンドレ・シャルランの音録り自体が優れているのでしょう。

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