パロット/タヴァナー・プレイヤーズによるパーセルの歌劇「ディドーとエネアス」全曲


「シャンドス30周年BOX」収録盤の感想記の続きです。今回はCD16を聴きました。

ANNI-16
パーセル 歌劇「ディドーとエネアス」全曲
 A・パロット/タヴァナー・プレイヤーズ
 1981年録音

アンドリュー・パロット指揮タヴァナー・プレイヤーズの演奏によるパーセルの歌劇「ディドーとエネアス」全曲盤で、声楽陣にはエマ・カークビー、ジュディス・ネルソン、デヴィッド・トーマス、それにタヴァナー合唱団が起用されています。

「ディドーとエネアス」はパーセルの残した唯一のオペラで、17世紀オペラ屈指の名作として認知されており、シナリオとしてはギリシア神話を題材とした、トロイ王子エネアスとカルタゴの女王ディドとの悲恋を扱ったものです。

ところで、このパロット盤を聴いていて、これと全く同一の題材を、後年ベルリオーズがオペラ作品に取り上げていたことを思い出しました。歌劇「トロイアの人々」です。

POCL15203
ベルリオーズ 歌劇「トロイアの人々」
 デュトワ/モントリオール交響楽団
 デッカ 1993年 POCL1520/3

このベルリオーズの歌劇も、パーセルの歌劇「ディドーとエネアス」と同一のシナリオに基づくものです。

もっとも細かい点に多少の違いがあるようで、例えばエネアスにディドーを捨てイタリアへ向かうように決意させるのは、ベルリオーズの方ではトロイアの英雄ヘクトールの亡霊なのに対し、パーセルのオペラではマーキュリーに化けた魔女ですし、ディドーが自殺するラストのくだりなども、ベルリオーズの方ではエネアスとローマを呪いながら壮絶に息絶えるのに対し、パーセルのオペラでは「死は今や私の友」と述べつつ、運命を受け入れ安らかに息を引き取るという形になっています。

とはいえ、そういう差異以上に聴いていて面白いのが、同じシナリオに拠りながらオペラ作品としての雰囲気がまるで正反対である点で、もちろんかたや17世紀、かたや19世紀という年代の違いもあるとしても、やはりパーセル、ベルリオーズそれぞれの作曲家としての気質が本質的に対極である点が大きいのでしょう。

後年のワーグナーのオペラの先駆とさえ評されるベルリオーズの「トロイアの人々」での、魔術的なまでの管弦楽的色彩感に対し、弦楽器だけの質朴なオーケストレーションでスタティックに綴られる「ディドーとエネアス」の音楽美。

パロット/タヴァナー・プレイヤーズ&合唱団の演奏は古楽演奏としての実質的なアプローチに基づくものですが、透明感を帯びたアンサンブルの優雅さがこのオペラの音楽美に絶妙に照応して申し分なく、清らかな美声が印象的なエマ・カークビーのディドーも役柄としてはおそらく理想的でしょう。

「トロイアの人々」のデュトワ盤についても簡単に触れますと、ディドー役のフランソワーズ・ポレを中心に、ほとんどワーグナーを聴いているような感覚に近い、ドラマティックな表出力が聴かれ、オーケストラもこのオペラの管弦楽的魅力を満喫させてくれる名演を披歴しています。また現状、このオペラ全曲盤として歌詞対訳が付いている唯一のディスクとしても貴重ですね。

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