サイモン・ラトルによるアメリカン・ミュージック録音集成ボックスセット


アメリカン・ミュージック録音集
 ラトル/バーミンガム市交響楽団ほか
 EMIクラシックス 1986年~99年 2150142
2150142

昨年購入した、サイモン・ラトルのアメリカ音楽のレコーディングの集成盤(CD7枚組)です。

これは以前、感想を掲載すると言っておいて、出しそびれていたものなのですが、ちょうど先日マゼール/クリーヴランドの「ポーギーとベス」全曲盤を聴いたばかりで、いい機会ですので、今日一通りざっくりと聴いてみました。

CD1:
ジョン・アダムズ作品集
 ラトル/バーミンガム市交響楽団 1993年録音

収録曲は、
①ハーモニウム(和声楽)
②管弦楽のためのフォックストロット(議長は踊る)
③2つのファンファーレ(トロンバ・ロンターナ、ショート・ライド・イン・ア・ファスト・マシーン)

いずれも1980年代のジョン・アダムスの代表的な管弦楽作品です。アダムズとしてはポスト・ミニマルの作風期に属し、現代音楽としての強烈な前衛精神こそ控えめながらも、取り付きやすい旋律の援用を伴いながらの精妙な色彩和声の推移と、全奏時の強烈なハーモニーの色彩照射に特徴が感じられます。

そういう音楽の特徴を、ラトルはバーミンガムのアンサンブルを自在に駆使して緻密かつ大胆に再現していて、その入り組んだハーモニーの綾を解き解すような明晰な演奏展開といい、トッティにおいてアンサンブルが発するカタストロフ的な表出力といい、すこぶる研ぎ澄まされた音響展開に思わず惹き込まれました。続くCD2以降がかなり「軽め」なこともあり、本ボックス全7枚の中では最も重量感に富んだ一枚です。

CD2:
バーンスタイン ミュージカル「ワンダフル・タウン」
 ラトル/バーミンガム市交響楽団 1998年録音

バーンスタインの残したブロードウェイ・ミュージカルのひとつで、アメリカン・ドリームを夢見てニューヨークにやってきた若い姉妹のサクセス・ストーリーが描かれています。歌詞対訳をもっていないのでストーリーの細部までは分らないのですが、ミュージカルはオペラと違って対訳が無くても意外と不都合は感じないもので、大まかな話の流れに沿って音楽を追っていくだけで十分楽しいですね。ディスクの余白にはバーンスタインの「プレリュード、フーガとリフ」も収録されています。こちらはロンドン・シンフォニエッタとの演奏です。

CD3:
デューク・エリントン・アルバム
 ラトル/バーミンガム市交響楽団 1999年録音

「A列車で行こう」、「ユーアー・ザ・ワン」、「ソフィスティケイテッド・レディ」といった、デューク・エリントンの有名なナンバーが12曲収録されています。オケはラトルの手兵バーミンガム響ですが、各種ソロ・パートにはジャズ・ミュージシャンの有名どころが起用されているとのことです。ちなみにこのジャズ・アルバム、ラトルが録音したのは、すでに次期ベルリン・フィル音楽監督に内定していた時期! このクロス・オーバーぶりが、ベルリン・フィルでも活かされれば面白いと思うのですが、、、

CD4~CD6:
ガーシュウィン 歌劇「ポーギーとベス」全曲
 ラトル/ロンドン・フィル 1988年録音

このラトル/ロンドン・フィルの全曲盤は、マゼール盤の全曲盤とはテンポ感がかなり違いますし、少なくともジャズっぽさというか軽妙なノリの良さというか、そういう要素はマゼール盤よりも強く感じます。

「ポーギーとベス」をジャズでもミュージカルでもオペレッタでもなく、あくまでオペラとして録音する、と表明して史上初のノーカット録音を行ったマゼールの演奏は、最高のアンサンブルを駆使しての音楽の精緻な流れが魅力でしたが、表情として多少堅苦しいような印象もありました。こちらのラトルの演奏はマゼール盤よりはブロードウェイ風なムードが強く、そのぶんジャズ・オペラ的な面白さを印象付けられるものでした。

ポーギー役はマゼール盤と同じウィラード・ホワイト。歌唱力、演技力ともにマゼール盤のそれよりさらに磨きがかかっていますね。ただ、かつてのとんがった感じは後退し、表情が少し丸くなったようですが、、、

CD7:
①ガーシュウィン ラプソディ・イン・ブルー
 ドノホー(pf) ラトル/ロンドン・シンフォニエッタ 
 1986・87年録音
②ガーシュウィン 「ソング・ブック」
 ドノホー(pf) 
 1990年録音
③ガーシュウィン ピアノ協奏曲ヘ調
 ドノホー(pf) ラトル/バーミンガム市交響楽団 
 1990年録音

「ラプソディ・イン・ブルー」は通常録音されるオーケストラ版ではなくバンド用のオリジナル版による演奏です。これはポール・ホワイトマン楽団のジャズ・ブラスが1924年にこの曲を初演した際の編成で、オーケストラ版より規模が小さく、編成内容も、ホルンがないかわりにサクソフォーンが加えられていたりします。そして、この演奏ではサクソフォーン・ソロに、イギリスの名サクソフォーン・プレーヤーのジョン・ハールが起用されています。

オーケストラ版よりもジャズ・テイストの強い表情が新鮮で、ロンドン・シンフォニエッタのノリのいいリズムと華やかなフレージングが爽快です。ドノホーのピアノ・ソロもいいですね。

しかしこのディスクの白眉はむしろピアノ協奏曲だと思います。フットワークの効いたドノホーのソロの洒脱感がいいですし、ラトル&バーミンガム響の伴奏も、「ラプソディ・イン・ブルー」の時より充実感が勝り、豪快なティンパニ強打をも伴う勢いのあるリズムの愉悦は、まさにラトルの本領という感じが強く出ています。

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