ルイージ/ドレスデン・シュターツカペレによるモーツァルトの歌劇「イドメネオ」全曲


モーツァルト 歌劇「イドメネオ」全曲(R.シュトラウス版)
 ルイージ/ドレスデン・シュターツカペレ
 オルフェオ 2006年ライヴ ORFEOR701072
ORFEOR701072

確か、ひと月ほど前だったと思いますが、現ドレスデン国立歌劇場の音楽総監督であるファビオ・ルイージが、2012年のシーズンからチューリヒ歌劇場の音楽総監督に転任するというニュースが報じられました。

なにしろオペラ劇場としては名門中の名門であるドレスデン歌劇場を辞してチューリヒ歌劇場へ転身というので、ちょっと意外というか不可解な印象を覚えたのですが、もしか保守的なドレスデンよりは急進的なチューリヒの方が自分の個性に適していて、本当にやりたいことが出来るなど、そういう判断があったのかも知れないですね。

ところでルイージ/ドレスデンの録音はこれまでソニーからいくつかリリースされていて、そのうちのひとつ、ブルックナー9番については当ブログで以前に感想を掲載していますが、ソニー・レーベルの音質は往々にしてリマスタリングでの作為が行き過ぎて不自然な音場感に帰着する傾向があり、私の印象としても、少なくともルイージの形成する音響表情のメリハリを感得するには適していても、ルイージ体制下の有りのままのドレスデン・サウンドの実情を、必ずしも的確に捕捉していないのではないかと感じていました。

そこで登場するのが2006年ザルツブルク音楽祭でのライヴ収録である、このモーツァルトの歌劇「イドメネオ」全曲盤なのですが、このディスクは、もともとR.シュトラウス編曲版というあたりの珍しさに惹かれて購入したものでした。それが聴いてみると、版云々よりもむしろオーケストラの奏でる音響的な味わいの方にグッと惹きつけられました。

最初の序曲冒頭に聴かれる表現力に富んだ強和音、そして高速テンポで導出される第1テーマを奏でる弦合奏の、押し出しのある響きと迫力。(1:06)からの第2テーマではイ短調へと揺れるハーモニーの素晴らしいコントラストが聴かれますし、以降もそのアンサンブル展開においては、ハイ・テンポを主体としながらも安心して聴ける盤石の安定感と、充実したドレスデン・サウンドの醍醐味が充溢して聴き惚れるばかりです。

本編以降も、全幕を通してオーケストラのオペラ演奏に対する高度な技術と演奏表現力が随所に息づき、リヒャルト編曲版であるがゆえの濃厚な味付けの音楽を、実に濃厚な音響展開をもって音化せしめていて傾聴させられます。第2幕中盤の間奏曲(3:10)あたりの高弦の嘆きの響きなどは特に迫真に満ちていて素晴らしいですし、さらに第3幕終盤のイドメネオ、イダマンテ、イリアの三重唱の場面に立ち込める、むせ返るような芳醇なオーケストラ・サウンドにおいては、それこそリヒャルトの「ばらの騎士」さえも彷彿とさせる雰囲気があり、それこそ陶然とした面持ちで聴き入っているうちに全編の幕を迎える、という感じになります。

もっとも、このルイージ/ドレスデンの「イドメネオ」全曲盤は、モーツァルト作品の本来の音響スケールからはかなり逸脱した、ある種の不自然さは否めないところでしょう。それでも、このオーケストラの保有する類まれなポテンシャルと音響美が相当に充溢する演奏内容であることは確かで、音質的にもソニー・レーベルのような人工臭が薄く、有りのままの響きという感じがしますし、少なくともルイージ体制下におけるドレスデン・サウンドの実像を感度良く伝達する稀少なCDではないかと、私には思われます。

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