ビリー/バイエルン放送響によるプッチーニの歌劇「ボエーム」全曲


プッチーニ 歌劇「ボエーム」全曲
 ビリー/バイエルン放送交響楽団
 グラモフォン 2007年ライヴ 4776600
4776600

今日は、ベルトラン・ド・ビリーの指揮、バイエルン放送響の演奏によるプッチーニ「ボエーム」の全曲盤を聴いてみました。

これは昨年にリリースされたディスクですが、先月、都内のCDショップのセールでかなり安く売られていたのを購入したものです。

2007年4月のミュンヘン・ガスタイクでの公演のライヴ録りで、バイエルン放送局との共同制作による収録のようです。ミミ役に超人気ソプラノのアンナ・ネトレプコ、ロドルフォ役に現在売り出し中の若手テノール、ローランド・ヴィラゾン、そしてフランス人のベルトラン・ド・ビリーがドイツの名門シンフォニー・オーケストラを振っての演奏にして、ムゼッタ役ニコール・キャベル、マルチェロ役マリウス・キーチェンと、指揮・オケ・主要キャストにおいてとにかく「イタリア」が出てきません。まさか意図的にイタリア産を排除したというのでもないと思いますが、ちょっと意表を突かれたような気がしました。

それはさておき、この「ボエーム」というオペラですが、私はプッチーニの最高傑作ではないかと思っています。

出世作の「マノン・レスコー」、人気ナンバーワンの「トスカ」、日本が舞台ゆえに親しまれている「蝶々夫人」、絶筆の「トゥーランドット」、いずれも名作ですが、どれか一つを取るとすると、私の場合は「ボエーム」で、聴き終えた後の余韻の深さが、プッチーニの他作品とひき比べても一味違うように思われるからです。プッチーニの主要作の中ではドラマティックな要素は控えめで、そのあたりの抑制の効いた作風が却ってドラマを雄弁たらしめているような、絶妙な味わいのオペラ、そんな感じがします。

本ディスクですが、特に感心させられたのは音質です。眼前にステージが広がるような、抜群の臨場感。これはグラモフォンというよりバイエルン放送局の録音技術の賜物ではないかという気がしますが、いずれにしても、この音質の良さは多くの「ボエーム」全曲盤の中でもおそらく一頭地を抜く水準にあるように思います。

ベルトラン・ド・ビリーとバイエルン放送響のアンサンブル展開はすこぶる正攻法なものですが、このオペラならではの音響的な楽しさが聴いていて良く伝わってくるあたりは好感的で、特に第2幕などはおもちゃ箱をひっくり返したような雰囲気が良く出ていて楽しさの限りですね。

歌唱陣については、ネトレプコのミミは第1幕から早くも歌に暗いムードを匂わせていたり、全体にちょっと演技過剰で、しかもそれがいまひとつ真に迫らないような印象も残りました。声量やテクニックなどは文句無しという感じですが、肝心の情感表現においては、稀代の「ミミ歌い」たるテバルディ、フレーニあたりと比べて、いまひとつの物足りなさが否めませんでした。ネトレプコはその美貌も大きな武器とされますから、実演で聴くならまた印象も変わってくるような気もしますが、、

むしろ、ロドルフォ役のローランド・ヴィラゾンの方が情感表現に秀でていて、聴いていて魅了される場面が多々ありました。例えば第3幕でマルチェロに「もうこれ以上、この苦しみを隠しておけない」と言って本心を独白する場面など、それを境にそれまでの明るく陽気な振る舞いからムードをガラッと一変させ、痛切を極めたようなニュアンスを表出させていて、かなり真に迫っています。そのあたりの超演技的な歌唱表現力において、単に美声のテノールというに留まらないものを秘めているような、そんな印象を感じました。

コメント

 

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog
Copyright © クラシックCD感想メモ All Rights Reserved.