ハジェット/アンサンブル・ソネリーによるバッハの管弦楽組曲全曲(原典版)


J.S.バッハ 管弦楽組曲全曲(原典版による演奏)
 ハジェット/アンサンブル・ソネリー
 アヴィー 2007年 AV2171
AV2171

これは先日、CDショップで新譜を物色していた際に興味をひかれて購入したディスクで、モニカ・ハジェットのヴァイオリンと指揮、ゴンサロ・ルイスのオーボエ・ソロとアンサンブル・ソネリーの演奏によるバッハ・管弦楽組曲の全曲盤です。

最初は、バッハの管弦楽組曲の全曲盤で1枚収録のものは珍しいな、くらいに思って手に取ってみると、何やら「原典版」による演奏という、よく分らない表記があります。さらに見ると、「アンハルト・ケーテン侯レオポルド王子のために」という、さらによく分らない表記もあります。

それで購入して、ライナーの英文をひと通り読んでみました。それを要約すると、以下のようなコンセプトに基づく演奏のようです。

---バッハの4曲の管弦楽組曲はいずれも正確な作曲年代が不明で、現在一般に演奏されている版は、後年バッハがスコアを加筆改訂した版である可能性が高い。しかるにこれら組曲の推定作曲年代は、1720年頃のケーテン時代であるというのが通説であり、そのケーテン時代にバッハが仕えたレオポルド王子お抱えの宮廷楽団の編成に基づいた版こそが、バッハが当初想定したもの、すなわち「原典版」であるはず。このような仮説をもとに、管弦楽組曲のスコアを我々の手で再構成して演奏したものが当ディスクである。---

一般の版と具体的にどう違うのかについても同ライナーに記述されているので、それを見ながら4曲ひと通り聴いてみました。

まず組曲第1番ですが、これは何ら編成が変わっておらず、一般に演奏されている版どおりで演奏されています。ライナーによると、4曲のうちこの組曲第1番だけは後年のバッハの改訂を免れた曲なので再編成の必要なし、とのことです。

続いて組曲第2番ですが、フルート・パートが削除され、代わりにオーボエが用いられています。例えば序曲(2:18)からのフーガ冒頭で、普通ならフルートが華やかなソロを展開するところ、ここではオーボエに置き換えられていて、かなりシックな感じです。ケーテン時代の宮廷楽団の編成を鑑みると、このように考えるのが妥当、とライナーでは述べられています。

組曲第3番と第4番ですが、いずれもトランペットとティンパニが削除され、ティンパニはチェンバロに、トランペットの旋律線はヴァイオリンに、それぞれ置き換えられています。これもやはりケーテン時代の宮廷楽団の編成に基づくもののようですが、いずれにしても通常版とはかなり音楽の印象が変わってくる感じです。

以下は私なりの感想ですが、組曲第2番に関しては聴いていて新鮮な音楽美に事欠かず、かなり傾聴させられました。本来のフルートの方が確かに華やかで、メルヘンチックですが、オーボエに変わるとメルヘンというより現実感に根ざした音色の美しさの方が立ち現われる感じで、地味ながら音楽がキリッと締まった感じになる、そんな気配があります。それは版の違いに加えて、おそらくオーボエ・ソロのゴンサロ・ルイスの表現力によるところも大きいのでしょう。

対して、組曲第3番と第4番ですが、率直に言っていささか厳しいと思います。組曲第2番と違って編成的には単純な引き算になるので、響きがいかにも緊縮的ですし、それ以上にトランペットとティンパニの離脱はこれら2曲のイメージの根底に関わるような、そんな気もしました。また、4曲続けて聴いていると、編成を統一してしまっているためコントラストがたたず、第3番・第4番も第1番・第2番と同じような曲に聞こえてしまうあたりも問題かと思います。

版のことはさておき、演奏自体はかなりの名演で、全4曲が1枚のCDに収録されていることからも伺われるように、全体にテンポはかなり速めですが、それでいて雑然とすることなく、端正でキリッとしたフォルムが形成されていますし、編成を絞っているとはいえ、一貫して求心力に富んだアンサンブル展開にもかなりの充実感があります。

以上、このハジェット/アンサンブル・ソネリーのバッハ管弦楽組曲「原典版」のCDはなかなか興味深いコンセプトで、内容的にも新鮮で楽しめました。もっとも第3番・第4番については、やはり通常版の方がいいなと思ったのも事実ですが、そう思えたのも本ディスクを耳にしたからこそであり、このバッハは私には色々と有意義でした。

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