メンデルスゾーン劇付帯音楽「真夏の夜の夢」CD寸感


昨日(6/21)の休日は、ちょうど今年の夏至にあたる日でした。

夏至といえばシェイクスピアの「夏の夜の夢」などが思い浮かぶところですが、本年はちょうどメンデルスゾーン生誕200周年にあたる年でもありますね。

そういうことで、昨日を中心にメンデルスゾーン作曲の劇付帯音楽「真夏の夜の夢」の演奏をさまざまなCDでざっくりと聴いてみました。以下、それぞれの寸感を書いてみます。

①ブリュッヘン/18世紀オーケストラ
 GLOSSA 1997年ライヴ録音

Mendels-midsummer1

アンサンブルの弦と管の音色の鮮やかな対照感、強めのアタックによる弦のフレージングの切迫感、管群パートの発する音色の鋭い点綴感、そういう側面の強調された覚醒的なスタイルでの名演で、音楽のピリッとした雰囲気がいい感じです。演奏技術的な側面といいスケール感といい、モダン編成オーケストラによる演奏に比しても遜色なく、聴きごたえが濃厚ですね。

②ヘレヴェッヘ/シャンゼリゼ管弦楽団
 ハルモニア・ムンディ・フランス 1994年録音

Mendels-midsummer-2

こちらもブリュッヘン盤と同様、古楽器編成オーケストラによる演奏で、録音時期も近く、響きの洗練の度合いも互角で甲乙付けがたいものですが、響きの感触には微妙に温度差が感じられます。このヘレヴェッヘ盤は総じてまろやかにして優美な音色の淡彩が印象的な、ドリーミーなスタイルでの名演という感じで、音楽の陶酔的な肌触りが秀逸です。

③クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団
 EMIクラシックス 1960年録音

Mendels-midsummer-3

古典的名盤です。やや遅めのテンポ、がっちりと強固な構築感、各声部を極めて重厚に鳴らすアンサンブルの質感。終曲までの安定したテンポ感と重厚な音響展開も演奏全体に構築的で濃密な感触を与えていますが、それが過ぎて、あまりシェイクスピアの世界らしくないのが、難点といえば難点かも知れませんね。むしろゲルマン的な幻想感のようなものに換骨奪胎されていると考えるべきでしょうか。

④プレヴィン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 フィリップス 1985年録音

Mendels-midsummer-4

やはりウィーン・フィル強しで、世評の高い名盤です。全体に表情がおおらかで、音楽が伸びやかで、音色も美しく、おそらくこの曲に対してある程度共有的に期待されている表情のイマジネーション、例えば幻想的な音楽の起伏、メルヘン的な色彩、あるいはユーモア・ロマンといった要素を、最大公約数的に持つ演奏ではないかと思います。

⑤アーノンクール/ヨーロッパ室内管弦楽団
 テルデック 1992年ライブ録音

Mendels-midsummer-5

個々のフレージングの古楽奏法的な鋭角性を意識したような、メリハリの効いたアーティキュレーションが印象的な演奏です。その結果、この演奏はこの曲に一般に期待されるような、ドリーミングな音楽的階調を提供する演奏には仕上げられていないようですね。おそらくこの演奏で聴くべきは、この曲に対する従来までの、慣習的な表現作法上の生ぬるさを、敢えて払拭しようというような意欲自体にあるような気がします。

⑥アバド/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ソニー・クラシカル 1995年ライブ録音

Mendels-midsummer-6

ベルリン・フィルのジルベスターコンサートのライブ収録です。アバドの指揮は速めのテンポを基調とした推進的かつ躍動的な性格が強く、オケの合奏精度もさすがに高い水準ですが、ジルベスターコンサート向けの構成ということで、かなりカットが入れられているようです。葬送行進曲やベルガマスク組曲がないのはともかく、間奏曲後半のイ長調アレグロ・モルト・コーモド以降がばっさりカットされているのは、ちょっと勿体ない気もします。

⑦ダヴァロス/フィルハーモニア管弦楽団
 IMP 1993年録音

Mendels-midsummer-7

全編に渡ってハイ・テンポの推進性が強調されている演奏です。序曲など第1テーマからハイ・テンポで一気に駆け抜けられていて、部分的に聴くといささか情緒不足で情感に乏しいような印象も受けるとしても、その一気呵成なアンサンブルの活力が、並はずれた高揚感を醸し出していて思わず傾聴させられます。「妖精の歌」は二人のイギリス人歌手による端正な英語の発声に基づく品の良い歌唱で、シェークスピアの雰囲気に良くあっていますね。

⑧マッケラス/エイジ・オブ・インライトゥンメント管弦楽団
 ヴァージン・クラシックス 1987年録音

Mendels-midsummer-8

おそらく同曲初の古楽器編成オーケストラによる録音です。比較的小人数編成の弦楽パートの、古楽器的な音色の持ち味が良く活かされていて、全体に響きとして派手さが薄いのに音楽としては色彩的、という古楽器演奏独特の特性が良く出ています。反面、全体的にアンサンブルの技巧的な側面が大人しく、また響きの総音量も抑制されているので華やかな雰囲気にいささか欠ける感じはします。

⑨レヴァイン/シカゴ交響楽団
 グラモフォン 1984年録音

Mendels-midsummer-9

響きの性質上、あまりコクのある感じではないですが、アンサンブルのキレの強さが印象に残ります。 響きの精密感、情報量、そういう点では随一の演奏ではないでしょうか。もともと過分に精密感を追求するような性質の曲ではないですが、しかしビシッと決まったフル編成のアンサンブルの華やかな響きは聴いていて爽快の一言です。

⑩リットン/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
 セラフィム 1985年録音

Mendels-midsummer-10

具体的にどこがどうというのではないのですが、少なくともここで掲載している他盤のそれと比べると全体として印象が落ちるなというのが率直な感想です。表情としては中庸でオーソドックスですが、この曲の場合は何かプラスアルファ的な要素がないと、やはりちょっと厳しい気がします。いかに名曲でも、序曲などは作曲家17歳の時の曲ですし、、、

⑪ヘレビッヒ/シュターツカペレ・ベルリン
 ドイツ・シャルプラッテン 1976・77年録音

Mendels-midsummer-11

演奏全体を通して弦パートにかなりの充実感があり、いかにも本場の演奏という感じです。序曲などに聴かれるドイツ音楽然とした響きの肌ざわりが印象に残ります。重低音パートの押しが全体的にもう少し強ければおそらく最高水準の演奏になったのではないか、そんな気がします。

⑫小澤征爾/ボストン交響楽団
 グラモフォン 1992年録音

Mendels-midsummer-12

通常カットされることの多い情景音楽まで含め、この曲の本来の音楽が一通り含まれています。もっとも本ディスクの聴きものは、メロドラマの日本語シナリオを読みあげる吉永小百合のナレーションではないでしょうか。購入してから10年以上も経つディスクですが、昨日ひさびさに聴いてみて、その朗読の素晴らしさに愚かしくも初めて気付かされたように思います。さまざまな役柄を演じながらの表情の絶妙な描き分けといい、演技力の凄みといい、聴いていて小澤/ボストン響の演奏以上に感心させられることしきりでした。さすがに稀代の名女優ですね。

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