マイヤーとブロムシュテット/ドレスデン国立管によるウェーバーのクラリネット協奏曲集


ウェーバー クラリネット協奏曲第1番・第2番、クラリネットと管弦楽のための小協奏曲
 マイヤー(cl)ブロムシュテット/ドレスデン国立管弦楽団
 EMIクラシックス 1985年 TOCE-7218
TOCE-7218

おとといサントリーホールで聴いた読売日響のコンサートではザビーネ・マイヤーのソロによりウェーバーのクラリネット協奏曲第1番が演奏されましたが、その前日、予習がてら聴いておいたのが本ディスクです。これは購入してから、もう10年は経つと思います。

ザビーネ・マイヤーの、例のベルリン・フィルとの一件が一段落した頃の録音で、天才クラリネット奏者として名を馳せた実力のほどが聴いていてよく伺える演奏です。

協奏曲第1番のソロの入り(1:12)の音色のとろけるような美しさにおいては、その弱奏感(スコアはp)からすると驚くほどに色彩的な訴求力があり、この時点でグッと演奏に惹きつけられます。それでいて(2:49)からの第2テーマのfにおいては先のpとは一味違う音色の強さと凛々しさがあり、以降も場面に応じて音色のニュアンスが実に多感。コーダの超高音の最強奏での、澄み切った音色もすごいですね。第2楽章冒頭のpp展開は夢のようですし、終楽章もソロの豊かな活動力が常に絶えない、そんな演奏です。

協奏曲第2番、小協奏曲の方もクラリネット・ソロに関しては極上の美演で、ブロムシュテットの指揮も、全体的に強奏時の音の切り方がもう少しキリッとしていれば、なお良かったと思いますが、ソノリティ自体の美感はかなり立っていると感じます。

以上がCDに関しての主な感想ですが、では実演でも同様だったかと言うと、実はCDとは印象がかなり異なるものでした。

CDで聴くと、どうしても音色が美しいとか美演とか、そういう方面に意識が行ってしまうのですが、実演になると美しい云々といった印象はむしろ二の次で(むろん十分に美演でしたが)、それよりはマイヤーのクラリネットの器楽臭の希薄さの方に、聴いていて言い知れない感銘を覚えました。

技巧的にはかなりの難曲であるのに音程ミスが皆無で、どのフレージングにも危うさが無い、これだけでも驚異的なのに、演奏が進むにつれて、そのクラリネットの音色がまるで人声のようなフィーリングを帯び出し、マイヤーのステージ上の華麗な立ち振る舞いも含めて、コンチェルトというよりむしろオペラ歌手がアリアを歌っているのを聴いているような、そんな錯覚さえ喚起させられるほどでした。

これはおそらくマイヤーのクラリネット演奏における天才性のひとつの発露ではないかと考えられ、その驚異的に流暢な吹き回しに基づく、天衣無縫のフレージング展開が、クラリネットの器楽的ソノリティを超え、何か別次元の表現力を獲得したかのような、そんな希有の感触を味わうことのできた演奏でした。

そしてその感触というのは、少なくとも前記CDで聴くぶんにはそれほど強いものでなくて、それは単純に実演と録音での聴こえ方の違いなのか、それとも若干25歳というCD録音時からマイヤーのクラリネット演奏自体が深化したからなのか、その両方なのか、分かりませんが、いずれにしてもCDとは印象が随分ちがうなと感じましたし、こと音楽の深みという点ではやはり実演の方がCDを一歩凌駕していたと思います。感動的でした。

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