LFJ2009公演感想:アンタイ/ル・コンセール・フランセによるバッハの教会カンタータBWV93とBWV33


・公演244(Cホール):
カンタータ「ただ愛する神の摂理にまかせ」BWV93
カンタータ「主イエスキリストよ、ただ汝にのみ」BWV33
 アンタイ/ル・コンセール・フランセ
 キャサリン・フーグ(ソプラノ)
 ダミアン・ギヨン(カウンターテナー)
 ハンス=イェルク・マンメル(テノール)
 マティアス・フィーヴェク(バス)

鈴木雅明/BCJに引き続き、同じCホールでのバッハ・教会カンタータ公演で、今度はピエール・アンタイ率いるル・コンセール・フランセによる演奏です。ここではBCJと違って合唱団は配されず、4人のソリストが合唱パートを歌う、いわゆるOVPP(One Voice Per Part)方式が採られていました。

この公演は、開演直前に曲目変更があることを知らされ、当初予定されていたカンタータBWV178が、カンタータBWV33に変更されました。

私はあらかじめBWV178の方を(アーノンクールの録音で)予習してきていたので、それがBWV33にチェンジと聞いてオヤオヤという感じでしたが、困ったのはカンタータBWV33について全く予習して来なかったことで、直前変更ゆえ歌詞のプリントも間に合わなかったようでBWV93だけしか配布されませんでした。

そのBWV93ですが、これは三位一体の祝日後第5日曜日のためのカンタータで、その核心は5曲めのレツィタティーフにおいて叙述されるものです。ペトロが一晩をかけた漁で一匹も網に掛けられなかったが、イエスの言葉に促されてもう一網を投じたところ、網に入り切らないほどの魚が掛かった、という寓話(実話?)がモチーフとされ、貧困にあえいでいても神を信じてさえいれば必ず富がもたらされる、という教義を背景とするカンタータです。

音楽的には弦とオーボエだけの質素なオーケストレーションですが、4曲めの二重唱アリアが現実離れした美しさを湛えていて異彩を放っています。このアリアはその旋律美ゆえに、後にバッハによりオルガン演奏用に編曲されてもいます(「シュプラー・コラール」第3番)。

さて、演奏ですが、まず座席位置が何と最前列、それも指揮者すぐ後方という位置でした。

このポジションは室内楽規模のオーケストラ、とくに古楽器オケのコンサートにおいてはまさに特等席で、今回初めて接するフランスの名門古楽器アンサンブル、ル・コンセール・フランセの織り成すアンサンブルの醍醐味を存分に堪能することができました。

そこにおいてはアンサンブルの響きの放つ官能的なまでの美しさがむせかえるほどに立ち込め、陶然とした面持ちで一時間ひたすら聴き入ってしまうほどでした。ヴァイオリンといいチェロといいオーボエといい、各楽器の放つ音色の得も言われぬ艶やかさ、この世のものとも思えないほどのフレージングのエレガンシー、それらのハーモニーの形成する極限的色彩美。その感覚的な至福感たるや圧倒的なものでした。

これは、直前に聴いたBCJのアンサンブルとは対極にあるようなアンサンブル展開で、そのBCJの印象覚めやらぬうちに聴いたこともあり、同じ古楽器アンサンブルでも、こんなにも違うものかと絶句させられるものでした。

誤解の無いように付け加えますと、これはBCJとル・コンセール・フランセと、古楽器アンサンブルとしてどちらが優れているかという話では全然なく、要するに方向性が明らかに別ベクトルであるということで、バッハの音楽の感覚的官能的な美を究極的に押し出したようなル・コンセール・フランセ、バッハの音楽の内面的な深みを究極的に押し出したようなBCJ、その優劣を判断するのは私には到底無理ですし、おそらく無意味でしょう。

実際、本演におけるル・コンセール・フランセのアンサンブル展開は、聴いていて酔いしれるほどの極上の音響美に陶酔させられるものであったとはいえ、必ずしもバッハを強く感じさせるものとは、言い難い側面も否めないと思います。

例えばBWV33においては、神というのは救い手であると同時に裁き手でもある、という2面性がカンタータのテーマとされています。前述のようにこのことは公演の後日に認識したもので、演奏中はそんなことは何ら意識せず聴いていたわけですが、仮にそれを知っていたとしても、そういう背反的な葛藤のドラマを音響的に十分実感できたか、というと、ちょっと疑問です。それほどに感覚的な愉悦味に勝るアンサンブル展開だからで、少なくともそういう点に関してはBCJの方がすんなり実感させてくれるのではと思われるところです。

以上、このル・コンセール・フランセのカンタータ公演は、直前に聴いたBCJのそれとはある種の対極性を備えつつも、それと同等の究極性をも感じさせる鮮烈な演奏内容でした。教会カンタータという同一ジャンルにしてこれだけ多様的な表現の広がりを実感させられるあたり、まさに「ラ・フォル・ジュルネ」ならではの醍醐味ではないかと思います。

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