「ポール・パレーの芸術」第2巻(ブラームス&ワーグナー)


「ポール・パレーの芸術」第2巻
 パレー/デトロイト交響楽団
 マーキュリー(タワーレコード) 1953~56年 PROA-289/90
PROA-28990

タワーレコード復刻の「ポール・パレーの芸術」シリーズの第2巻で、ブラームスの4番とワーグナーの管弦楽作品集を内容とするアルバムです。

ワーグナーの収録曲は①パルジファル第1幕への前奏曲②同・聖金曜日の音楽③ヴァルキューレの騎行④タンホイザー序曲⑤「ローエングリン」第1幕への前奏曲⑥「ローエングリン」第3幕への前奏曲⑦「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲⑧「さまよえるオランダ人」序曲⑨「ジークフリ-ト」森のささやき⑩「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死、以上10曲です。

このうちステレオ録音はワーグナーの①のみで、他は(ブラームスも含め)すべてモノラルです。

最初のブラームスですが、まず驚かされるのはテンポ変化の激しさです。先だってリリースされた、同じ顔合わせによるシューマンの交響曲全集においては、全曲とも概ね古典的フォルムに基づく均整感の強い音楽造りだったのに対し、このブラームスの4番ではアプローチをガラリと変え、かなり独特のロマンティック・スタイルに基づいた演奏となっています。

例えば第1楽章の冒頭は素っ気ないほどの快速調で流しているのに対し、同じ提示部でも最後の(3:20)あたりは際立ったスロー調子という按配で、以降もテンポが大きく揺れ、コーダの(10:20)あたりでのテンポの落とし方などもハンパでなく、ずいぶん個性的です。以降の楽章も、程度の差はありますが概ね同様の表情感です。

ただ、そういう個性味はともかく、このブラームスは、パレー/デトロイト響としては内容的にいまひとつと感じます。肝心のアンサンブルの鳴動力が振るわないからで、少なくとも前述のシューマンの交響曲全集と比べると明らかに聴き劣る印象を否めません。

モノラル録音の音質自体がシューマンほどの水準にないこともおそらく一因と思いますが、パレーの指揮としても、シューマンの時より切れというか思い切りが悪いような感があり、ことアンサンブルの彫りの深さ、立体感、鳴動力という観点においては、変則的なテンポ運用がいささか裏目にでているようなところがあるような気がします。

次のワーグナーですが、こちらは総じて名演で、いずれもパレー/デトロイト響の味の濃いアンサンブル展開の魅力の充溢する見事な演奏内容です。

この一連のワーグナーではブラームスの時のような大胆なテンポ変化は聴かれませんが、そのぶん表現が端正で、ダイナミクスが克明に浮き彫りにされていまし、音楽の流れもブラームスよりずっと良く、聴かせどころでの思い切りの良いオーケストラ・ドライブも大変見事で、聴いていて実に爽快なワーグナーです。私の印象でのベスト演奏は⑧のオランダ人で、これと④のタンホイザー、⑩のトリスタンとイゾルデがベストスリーだと思います。

音質的には唯一のステレオである①のパルジファル第1幕への前奏曲が突出していますが、②~⑩もモノラルとはいえ音響的な精彩が十分にあり、特に金管強奏などは素晴らしい実在感で録られています。

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