「ポール・パレーの芸術」第1巻(モーツァルト&ベートーヴェン)


「ポール・パレーの芸術」第1巻
 パレー/デトロイト交響楽団
 マーキュリー(タワーレコード) 1953~59年 PROA-287/8
PROA-2878

タワーレコード・ヴィンテージ・コレクションとして先月リリースされた「ポール・パレーの芸術」全5巻のうちの第1巻で、モーツァルトとベートーヴェンの交響曲集を内容とするアルバムです。

収録曲は①モーツァルト 交響曲第35番「ハフナー」②ベートーヴェン 交響曲第1番③同 交響曲第2番④同 交響曲第6番「田園」⑤同 交響曲第7番、録音年は①が1956年、②と③が1959年、④が1953年、⑤が1954年、①~③はステレオ録音、④と⑤はモノラル録音です。

以上5曲のうち①~③は本ディスクが世界初CD化のようです。④と⑤は2006年にグランドスラム・レーベルからCD化されています。ただ、私はそちらは聴いていないので、全5曲とも演奏を聴くのは本ディスクが初めてです。

聴いてみると、1枚目のモーツァルト「ハフナー」、ベートーヴェン第1、第2、いずれもパレーの手によるアンサンブルの彫りの深い練り上げ、そしてその手兵デトロイト響から繰り出される分厚く濃厚なサウンドに陶酔させられます。

パレーというと私の印象では、概してフランス音楽やロシア音楽の方面に録音が偏っていることもあり、ドイツ音楽との相性はどうだろうか、という先入観も正直抱いていたところですが、今年の春先に聴いたシューマン交響曲全集と、そして本ディスクの演奏を聴くに及んで、私のそういう先入観が見当違いであったことを認識させられたように思います。

特にベートーヴェンの第2の演奏内容が圧巻で、第1楽章(5:10)あたりからの低弦の響きの表出力などを始め、一貫的にバスが豊かで、それがハーモニーに豊かなコクを付帯させていて、推進的なテンポに拠りながらもバランスのよく練れて均整感の強いアンサンブル展開の、胸のすくようなドライブ感といい、実に素晴らしく、上質なステレオ音質の利を含め、パレーならではのベートーヴェンの醍醐味を堪能させられました。

2枚目のベートーヴェン「田園」と第7ですが、このパレーの「田園」は「史上最速の田園」とも呼称されている演奏とのことで、それほどのテンポスピードの速さが大きな特徴を形成しています。実際、曲全体で36分を切っており、第1楽章だけでも7分45秒と、驚異的なタイムです。

確かに個性的で、これほどのスピードにも関わらずアンサンブルをカッチリと整え、曖昧なく鳴らせるパレーの統制手腕にも感服させられるものですが、ただ、演奏自体の表出力としては、同じベートーヴェンでも本ディスク1枚目の第1や第2でのそれには及ばないような印象を受けます。

これだけのスピードゆえに、パレーといえどもアンサンブルを十二分に鳴らし切るまではやはり無理のようで、特に1枚目の第2の後にこの「田園」を耳にすると、第2よりも総じて響きの彫りが浅く、相対的に立体感が振るわず、という印象を否めませんでした。ただ、こちらはモノラルゆえの音質の不利もあるので、単純に演奏自体の良し悪しは言えないとは思いますが、、、

最後の第7は「田園」とは逆に、遅めのテンポが印象的で、特に第1楽章などはかなりゆっくりとしたテンポ運びです。「田園」に比べるとアンサンブルの立体感にかなりの充実が伺えますが、モノラルの音質面に若干の弱さを感じます。

以上、2枚目の「田園」と第7に関しては、音質面を差し引いたとしても、聴いていていまひとつしっくりこないような印象もあり、パレーのベートーヴェンのベストはやはり交響曲第2番ではないかと思いました。

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