ハーディング/ドイツ・カンマーフィルによるベートーヴェンの序曲集


ベートーヴェン 序曲集
 ハーディング/ドイツ・カンマーフィル
 ヴァージン・クラシックス 1999年 TOCE-55091
TOCE-55091

もう10年くらい前に購入したCDで、私がハーディングの演奏を初めて聴いたのが、確かこのディスクだったと思うんですが、いずれにしても、当時このベートーヴェンの非常な名演ぶりに度肝を抜かれたのが思い出されます。

先日サントリーホールで聴いたハーディング/新日本フィルのコンサートに関して、「やはりハーディングのベートーヴェンはいい」と書きましたが、その先入観の起点になっているのが、このドイツ・カンマーフィルとのベートーヴェンにおける素晴らしい演奏内容です。

コリオラン、エグモント、フィデリオ、レオノーレ第1及び第2等、そのいずれにおいても、すこぶる尖鋭な耳当たりを伴う、アンサンブルの響きの強烈味に圧倒されます。このべートーヴェンは、モダン・オーケストラにおいてのピリオド・アプローチの斬新性をフルに活かし切ったようなハーディングの独創性が強力な表出力に昇華されていて、聴いていて若手なのに凄い指揮者だなと思わされた演奏でした。この調子で、もしベートーヴェンの交響曲全集を録音するなら、きっと凄いことになるだろうとも思いました。

しかしその期待のベートーヴェンの交響曲全集は2009年現在まで録音はなされず、またハーディング自身レコーディングにあまり積極的ではないようで、このベートーヴェンの序曲集以後の録音も数えるほどしかリリースされていません。

そのハーディングの現在までのレコーディングのうち、オペラ及びコンチェルトを除いたものを以下にざっと概観しますと、、、、

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ブラームス 交響曲第3番、第4番
 ハーディング/ドイツ・カンマーフィル
 ヴァージン・クラシックス 2000・2001年 5454802

ベートーヴェンの序曲集と同じオーケストラによるブラームスで、編成もベートーヴェンの時と同じ8型です。このピリオド・スタイルのブラームスは、確かにバランス的に小編成ならではの利点が活かされた斬新な感触の演奏ですが、ベートーヴェンであそこまで為したコンビの演奏にしては、演奏自体の強烈味が全体に伸び切らず、期待したほどには、、、というのが正直な印象でした。

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マーラー 交響曲第4番ほか
 ハーディング/マーラー室内管弦楽団
 ヴァージン・クラシックス 2004年 5456652

これは2004年にリリースされた、賛否両論のマーラー4番です。おそらくマーラーの交響曲録音史上初の室内管による演奏で、文字通り「室内楽的なマーラー」です。

実際、この演奏でなければ耳にできないシーンも少なくなく、確かに新鮮さには事欠きませんが、肝心の音楽としての表出力がどうにも振るわないのが残念なところで、このマーラー室内管による4番は、個人的にはちょっと企画倒れではないかという感じが否めませんでした。

UCCG1389
マーラー 交響曲第10番(クック補筆全曲版)
 ハーディング/ウィーン・フィル
 グラモフォン 2007年 UCCG1389

昨年リリースされた、グラモフォンへのデビュー盤です。このマーラーの10番に関しては、以前にも本ブログで書きましたが、私としては内容的にいまいちというのが率直なところです。それは、このディスクで用いられている1989年校訂版自体を私があまり好きでないということもあるんですが、それを差し引いてもこのマーラーは、かつてのベートーヴェンで聴かれた表出力からは、かなりかけ離れている印象が否めませんでした。

ちなみに、マーラー10番のクック補筆全曲版のディスクで私が最も好きなものはインバル/フランクフルト放送響(デンオン COCO-75129)盤です。これは1992年の録音ですが、使用版は1976年校訂版で、1989年校訂版と比べて、急所におけるダイナミクスがいかに強烈かが聴いていてこよなく実感される演奏です。

以上、ハーディングのこれまでの録音をざっと概観してみましたが、結論としては、最初のベートーヴェンの序曲集以外はちょっとパッとしないような感じになっているように思います。

とはいえ、先日のサントリーでの実演を聴いた限りにおいて、やはりハーディングの本領はマーラー等のロマン派の分野よりもベートーヴェンを中核とする古典派の分野にあるような気がするので、もし今後のグラモフォンからのリリースを、そこに照準を合わせるならば、かなり期待できるように思われますし、個人的にはベートーヴェンの交響曲全集を出してくれたら、と思います。

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