カルロス・クライバー/ミラノ・スカラ座のヴェルディ「オテロ」87年ライブ


ヴェルディ 歌劇「オテロ」全曲
 C・クライバー/ミラノ・スカラ座管弦楽団
 メモリーズ 1987年ライブ ME1007/8
ME10078

少し間隔があいてしまいましたが、カルロス・クライバーのオペラ盤感想記シリーズの第6回です。

この「オテロ」は素晴らしいですね。まずオーケストラ演奏ですが、このオペラを得意としたクライバーの絶好調の演奏という感じがします。

第1幕冒頭の嵐の場面から、雷光を描く木管の鮮烈な色合い、激風を描くヴァイオリンの切迫した感触、雷音を示すティンパニの豪打、いずれも抜群で、全幕ともにスカラ座のオケの味の濃いソノリティの妙味を十分に引き出しながら、その持ち前のダイナミックなアンサンブル展開が各場面の情景をリアルに描き出していて魅了させられます。

第1幕最後のオテロとデズデモナの二重唱を導入するチェロの音色の甘美なこと(この同じチェロが、第4幕でオテロがデズデモナ殺害のために寝室に入るシーンでは、何ともいえない複妙な響きを奏で、ゾッとさせられますが)。第2幕終盤や第3幕終盤など、オテロの感情が極限まで高まるシーンでのアンサンブルのパンチ力も実に壮絶ですし、デズデモナ殺害シーンのものすごさも圧巻です。 

外題役ドミンゴの歌唱も最高ではないでしょうか。稀代のオテロ歌いと言われたドミンゴには数種類のオテロの録音がありますが、1970年代の録音は声量は絶大ながら深みがいまいち、逆に1990年代の録音は深みはあるものの声量面での衰えが顕著で、その真価を聴くには1980年代の録音がベストだと思われるところ、その肝心の正規盤である85年録音のマゼール/スカラ座盤の音質がピリッとしません。

CC33-359596
ヴェルディ 歌劇「オテロ」全曲
 マゼール/ミラノ・スカラ座管弦楽団
 EMIクラシックス 1985年 CC33-3595/96

残念ながらこのマゼール盤はどうにも薄っぺらい音質で、とにかくソノリティが平板です。このディスク、実はゼッフィレッリの映画「オテロ」のサウンドトラックとして製作されたディスクなんですが、何というか、いかにもサウンドトラック的な音質です。

したがって、ドミンゴのオテロとしてはこのクライバー盤がおそらくベストのような気がします。絶大な声量、鬼気迫る表現力。わけても第3幕は白眉で、デズデモナを詰問する場面など聴いていて空恐ろしくなるくらいですし、激高のあまり失神するラストのくだりなども、演技というにはあまりにリアルです。

デズデモナ役フレーニは、声量的にドミンゴに引けをとるシーンが多いとしても、こと演技面ではドミンゴと互角に渡り合っていて素晴らしいです。逆にヤーゴ役ブルゾンは、声量は申し分ないですが、その絶大な声量を頼みすぎているのか、迫真さがいまひとつで、少なくともかつてのゴッビのような名唱の域には届かず、という感じがします。

音質はおおむね良好ですが、時々ノイズが集中するようなところがあるようです。特に第2幕が少し聞き苦しいですが、第3幕や第4幕などは問題ないですし、少なくとも上記のマゼール/スカラ座盤よりはずっと上等なソノリティです。

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